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米国債務上限引き上げの行方

2017年08月29日

米国債務上限引き上げの行方


 米国の新会計年度は10月1日から始まりますが、今年はそれまでに歳出予算法案と債務上限引き上げ法案を連邦議会の上下院でそれぞれ通過させなければなりません。しかし議会は9月5日まで夏休みで、実質的には十数日しか審議時間がありません。

 予算案は期限内に通過しなくても暫定予算で凌げますが、債務上限が引き上げられないと政府は国債発行ができず、やりくりしても10月中旬には政府資金が底をつき行政がストップしてしまいます。

 何よりも米国債の借り換えや利払いもできなくなり、また「米国債がデフォルトする」と騒がれることになります。2011年にはこれでS&Pが米国債の格付けをAA+に引き下げてしまい、現在もそのままです。

 とくに予算案と債務上限引き上げが同時に審議されると、当然に財政支出削減がセットになり、各議員の政治的思惑が微妙に絡みギリギリまで難航してしまいます。2013年を含めて何度か時間切れとなり政府窓口が閉鎖されています。

 オバマ政権時の2015年11月2日には「超党派予算法」を成立させ、何と債務上限の適用を2017年3月15日まで棚上げしていました。その3月15日以降も政府短期証券の発行を削減するなどやりくりが認められていましたが、それも10月からは使えません。

 つまりあらゆる意味で「待ったなし」となります。

 連邦議会は上下院とも与党の共和党が過半数を占めており「何とかなるだろう?」と思われるかもしれませんが、実は財政削減を主張する議員はフリーダム・コーカスなど共和党議員に多く、逆に民主党議員を多数抱き込まなければなりません。

 とくに上院が難航しそうです。もともと共和党52:民主党48の議席ですが、時間切れを狙う議事妨害(フィリバスター)を排除するためには60の賛成票がいるため、今のところ「ほぼ絶望的」に思えます。

 さらに問題をややこしくしているのは、本来の予算案や債務上限引き上げは行政の最高責任者である大統領が議会に対して承認を働きかけ、米国債のデフォルトはもちろん政府窓口の閉鎖などを回避するという構図ですが、トランプ大統領は何と「メキシコの壁建設の予算16億ドル(1740億円)が認められなければ政府窓口の閉鎖も辞さない」と言い放っています。

 つまりトランプ大統領は自分の立場や役割が全くわかっていないことになりますが、そうまでして獲得したい予算はメキシコの壁建設のためだとすれば「本当に大丈夫なのか?」と心配になります。たぶんまったく大丈夫ではないのでしょうね。

 さらに付け加えれば、トランプが行政管理予算局(OMB、政府の予算関連業務の元締め)の局長に任命したミック・マルバニーは財政削減の強硬論者として知られています。その主義主張は立派だとしても、OMB長官は最も矛盾するポストであるはずです。

 この状態で9月5日から予算案と債務上限引き上げの審議が始まるわけですが、どう考えても「まとまりそうもない」となります。9月になると米国債のデフォルト懸念が再燃し、世界の金融市場が「少なからず」動揺する可能性があります。

 常識的にはドル安・円高、米国株安・日本株安、米国長期金利上昇・日本の長期金利低下といったところでしょう。米国長期金利の上昇は景気回復による健全な金利上昇ではないため、ドル高とはならないはずです。

 ところで米国の財政赤字が拡大を始めた時期は「強いアメリカ」を標榜して軍事拡大に走ったレーガン政権からとされますが、そのレーガン政権の発足時(1981年1月)の連邦債務残高は1兆ドル弱でした。そこからブッシュ(父)とクリントンの政権を合わせた20年間で連邦債務残高は5.6兆ドルとなりました。

 つまりブッシュ(息子)政権がスタートした2001年1月の連邦債務は5.6兆ドルだったわけですが、次のオバマ政権がスタートした2009年1月には10.8兆ドルとなっており、トランプ政権が発足した2017年1月には20兆ドルに到達していたはずです。

 つまり米国連邦債務の約4分の3はブッシュ(息子)とオバマの2人の大統領時代に積みあがったことになりますが、トランプも自由にやらせておけばもっと野放図に積み上げてしまうことになるはずです。
 
 一方で米国債の発行残高は(市場性のあるものだけです)、リーマンショック前の6兆ドルから15兆ドルまで増加していますが、その15兆ドルの内訳はFRBが2.5兆ドル、米国内の金融機関・機関投資家・MMF・家計が7兆ドル、公的を含む海外保有が5.5兆ドルとなっています。

 この状態で9月にもFRB保有債券(米国債とMBS)の縮小が始まるはずです。そこでいくら米国政治のチキンレースで最終的には回避できるとしても、米国債のデフォルト懸念が出てくることはあまり気持ちのいいことではありません。


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コメント
でもバブルだから株式市場は多少は下がるかもしれませんが、全体像でみれば右肩上がりです。
なんですよね?
ペンス氏と麻生氏の会談が中止になったのは、この議会承認で9月一杯は忙しくなり、それどころではない、とトランプ・ペンス政権が考えたからなのか?
>ペンス氏と麻生氏の会談が中止になったのは…

いや。麻生氏のナチス発言のせいでしょう。
(トランプの人種差別発言で揉めている)この時期に
ヘイト発言をした、麻生氏の大きなミスです。
これでペンス氏は麻生氏に大きな貸しを作ったことになり、
次に交渉を行うときは、大きな譲歩を迫ってくるでしょうね。
(相手の弱みに付け込む交渉術は、アメリカの得意技ですから)

だいたい債務上限問題は、もう何ヶ月も前からわかっていたのですから。
麻生氏の発言のどこがヘイト発言なのですか。貴殿は、麻生氏が誰をヘイトしたと理解しているのですか。

麻生氏は人種差別主義者ヒトラーを批判したんですよ。そのヒトラーを否定した麻生氏の発言はヘイト発言にはなりません。

麻生氏を個人的に好いているわけでも、嫌っているわけでもなく、氏の発言の内容をそのまま文字通りに聞けば、別にヘイト発言とは受け止めようもありません。ただ、言わなくてもよいヒトラーを引き合いに出したことは、冗長だったというだけのことです。

アメリカの相手の弱みに付け込む交渉術とは何ですか。では、他の国はどうなんですか。ロシアは経済協力を日本の受けれながらも、北方領土で譲歩しましたか。アメリカは会談を中止したのに、どうやって日本の弱みに付け込むのですか。電話で脅してくるのですか。

貴殿の考えは、適当にイメージや雰囲気で主観的に状況を描写しているだけで、論理性を欠いている。そういういい加減な人々が増えたから、日本はここまで落ちぶれたんだぜ、と嘆きたくなるような浅薄な書き込みです。

上記、書き込みのかたへ。

これは大変失礼しました。 しかし私は、
「何百万人も殺しちゃったヒトラーは、いくら動機が正しくてもダメなんだ」
という発言は、ヒトラーは動機が正しかった。
(すなわちユダヤ人差別が正しい)
と言ってるようにしか聞こえません。
だから、米国も怒ったのだろうと思っただけです。

米国も、麻生氏の真意は別にあるとわかっていても、
自分たちにとって有利になるなら、それを利用するんじゃありませんか?
「あんたが馬鹿なことを言ったから、交渉延期だ」
すなわちミスしたのは日本のほうだ、と決めつける事で、
米国は最初から、一段有利な位置に立てるんじゃありませんか?
(私は素人ですので、あくまで想像ですが)

そうやって他人の弱みに付け込む交渉が出来ないのは、日本くらいだろう、
というのが私の考えです。
単に、日本がお人よし過ぎる、もうちょっとタフな交渉出来ないの?
という意味でしかありません。たぶん当たっていると思いますが。

>そういういい加減な人々が増えたから、日本はここまで落ちぶれたんだ

つまり今の日本は落ちぶれている、と認めることになりますが。
もし日本が落ちぶれたとしたら、それは日本人にタフな交渉が
出来なかったからじゃありませんか?
(北方領土交渉のように)
>つまり今の日本は落ちぶれている、と認めることになりますが。
>もし日本が落ちぶれたとしたら、それは日本人にタフな交渉が出来なかったからじゃありませんか?
(北方領土交渉のように)

そのとおりだ。だからこそ、例えば麻生太郎氏のように率直な物の言い方をする政治家を育てていく必要があるんだよ。

アンタみたいに箸の上げ下げをお互いの論評し合っているから、日本人はひ弱になったんだ。



>米国も、麻生氏の真意は別にあるとわかっていても、
自分たちにとって有利になるなら、それを利用するんじゃありませんか?
>「あんたが馬鹿なことを言ったから、交渉延期だ」
すなわちミスしたのは日本のほうだ、と決めつける事で、
米国は最初から、一段有利な位置に立てるんじゃありませんか?

麻生太郎氏は、ロスチャイルド家と閨閥関係にあることは国際的に周知の事実です。

よって、麻生氏がヒトラーの動機は正しかったと言ってしまったという揚げ足取りは、成立し得ません。

むしろ、過去に日本の首相を務め、しかも財務大臣でる方がロスチャイルド家と閨閥関係にあるという事実のほうこそが深い意味を持つでしょう。
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