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株式市場のルールは公正か?  その3 

2010年11月09日

 「一枚のIRで100億円の利益」

 ご存知のように、株式市場に関する様々なルールは近年ますます厳格化され、罰則規定も強化されています。ところがそれほど厳格化されたルールが、それなりに公正に運営されているのならいいのですが、実際は目を疑うようなことが堂々とまかり通っています。

 このシリーズは3回目なのですが、実はこれが一番、「目を疑うようなこと」であり、かつ当局が全く問題視せずに何年も過ぎ、いまだに追随するケースが数多く出ているのです。それがこの「一枚のIRで100億円の利益」です。

 2005年4月26日に、株式会社ヤマシナ(大阪2部上場。コード5955)が何の変哲もない新株予約権発行のIRを出しました。新株予約権の対象となるヤマシナの株式数は1億1670万株で、新株予約権の発行価額は全部で1167万円でした。行使価格は22円で、これは直前6カ月の株価平均の90%となっており、ルールの範囲内でした

 その時のヤマシナの発行株数は3億3622万株でしたので全額行使されると34%程の希薄化となりますが、それほど極端なケースではありませんでした。もちろん全額行使されると25億円程の資金がヤマシナに入ることになっていました。
 
 同日、もうひとつIRがあり、ヤマシナ株式10株を1株に併合することを同年6月29日の株主総会の議案にすることも発表されました。こうすると発行株数は3億3622万株から3362万株になり、信託銀行に支払う手数料を軽減できるという、もっともらしい理由が書かれていました。

 ところが株主総会の前日である2005年6月28日になって、以下のような驚くべきIRが出たのです。「今回発行される新株予約権は、今回の株式併合により株式数や行使価格の変更を行わないことといたしました。」

 ここで初めてヤマシナの筆頭株主や一部の経営陣のとんでもない計画が分かったのですが、何しろ株主総会の前日でもあり、大半の株主は実態を全く知らされないうちに議決権行使書を郵送してしまった後でした。

 10株を1株にする株式併合をすると、会社資産は変わらないのに発行株式数が10分の1になるのですから、株価は単純に10倍になります。ヤマシナの場合も実際にそうなりました。つまり25円くらいだった株価が併合後には250円くらいになりました。ところが新株予約権は株数も行使価格も変更しないわけですので、併合で発行株数が3991万株、時価250円くらいになったヤマシナが、1億1670万株の行使価格22円の新株予約権を堂々と発行したのです。

 当然、巨額の利益となるので、この新株予約権は早速行使され、行使された株券が早々と市場に売りに出されました。株価推移をみると2005年12月までは200円台を維持し、2006年4月に100円を割り込み、2008年10月には20円前後と、すっかりと元に戻ってしまいました。つまり一般株主は何の恩恵も受けずにただ価値が10分の1になってしまっただけなのです。

 この筆頭株主は、もちろんいろんな名前に分散して税金を逃れようとしていたようですが、一体いくら儲かったのでしょうか? 今のヤマシナの発行株数が1億4361万株と言うことは、現在までに行使されたのが1億370万株と満額ではなかったことと、この筆頭株主は今でも30%以上を保有する筆頭株主なので、全額売却したわけではなさそうです。もちろん何株を幾らくらいで売却したかわからないのですが、どう考えても100億円以上の巨額の売却益を得ているはずです。

 この件で、一番の問題は、10株を1株に併合すれば株価は10倍になり、もしその時転換社債などを出していたらその転換価格も10倍になり、その価値が変わらないことは常識です。新株予約権の株数も行使価格も変わらないとは、誰も夢にも思わないのですが、その夢にも思わないことを堂々とやって巨額の利益を得た者がいるにもかかわらず、当局が一切問題視していないことです。たぶん併合したら、新株予約権の行使価格を調整しなければならない、とはっきりと法律に書いていないのでしょう。書いていないから問題にしないのではなく、こういう事例が出てきたら早急に歯止めをかけなければならないはずのところを、全く何もしていないのです。

 これは資本市場の根源に関わるような問題で、こういうのを放置するから、ますます株式市場の質が低下するのです。

 何も問題にならないようだからと、追随するケースがそのあと続々出てきています。

NFKホールディングス(ジャスダック上場。コード6494。2005年8月に10併合)
昭和ホールディングス(東証2部。コード5103。2006年12月に10併合)
千年の杜(当時の社名。大阪2部上場。コード1757。2007年5月に10併合
ルーデンホールディングス(ジャスダック上場。コード1400.2007年9月に10併合)
A. Cホールディングス(ジャスダック上場。コード1783。2008年7月に10併合)

 みんな、当時あった予約権を併合後もそのままの価格で使っています。しかしヤマシナのようにそれほど大量の新株予約権でなかったことや、株価がすぐに下落してしまったことなどから、それほど巨額の利益を得たということではなさそうです。


 このシリーズは、これで終わりにします。これらは、明らかにおかしいことを当局が、全く放って置いているケースを書いてきました。株式市場のルールを際限なく厳格化して、結果、株式市場のエネルギーを奪ってしまっている当局にしては、あまりにもお粗末な対応だということを少しでも理解してもらいたかったわけです。

 こんどは、これに代わるシリーズとして、「あの事件はどうなった?」を始めます。株式市場では犯罪性と言うことは抜きにしても、その時々で社会問題になった事件は数多くあります。その時は活発に報道されるのですが、いつの間にかみんなの記憶から消えてしまい、その事件の評価や、市場に与えた影響を考えてみる機会が全くなくなっている事件がいっぱいあります。それを少しずつ書いていきたいと思います。

 他のシリーズも並行していたり(注参照)、株式や為替市場に重大な出来事が会った時は、そちらを優先しますので、何日ごろになるかは分かりませんが、第一回は「乗っ取り屋の影におびえたブルドックソースの対応は正しかったか?」か、「ライブドアよりはるかに重大事件なのに、なぜか課徴金で終わった日興コーディアル事件」のどちらかにします。時々、覗いてみてください。


(注)同時並行で、以下のシリーズも書いています。
「官僚組織について」 第1回は10月23日
「世界のファンド事情」 第1回は11月4日
「エクイティファイナンスの裏側」 10月14日、16日、17日 それに昨日の「りそなの6000億の公募増資」は番外。まだまだ続きます。

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