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ソフトバンクはどこへ行く?

2017年11月08日

ソフトバンクはどこへ行く?


 ソフトバンクグループ(以下、「ソフトバンク」)が11月6日に発表した2017年4~9月期連結決算は、営業利益が前年同期比35%増の8748億円と(4~9月期として)過去最高となりましたが、最終純利益は同87%減の1026億円しかありません。

 主なセグメント別利益は、国内通信事業が前年同期比6.9%減の4339億円、海外のスプリント事業が同93.3%増の2021億円、新たに加わったソフトバンク・ビジョン・ファンド事業(以下、SVF事業)が1862億円となっています。

 何と言ってもソフトバンクの大胆な買収戦略を支えてきた「規制に守られた国内通信事業が稼ぎ出す潤沢なキャッシュフロー」が減少に転じていることが気になりますが、その代わりに海外のスプリント事業がやっと収益化して補っているように見えます。

 ところがその全米第4位のスプリントと同3位のTモバイルの経営統合が、まさに決算発表直前の11月4日に「破談」となりました。その理由は孫社長が経営統合する新会社の経営権(50%以上の出資比率や取締役選任)を主張して譲らなかったからとされています。

 しかし直近(11月6日)の時価総額が、スプリントの236億ドルに対してTモバイルが462億ドルと「ちょうど2倍」であるため、そもそも無理な話です。そして孫社長はすぐさまスプリントと米CATV会社のアルティスUSAとの業務提携を発表し、また現在83%であるスプリントの持ち株比率を85%に引き上げるとも発表しています。

 ここは7月4日付け「スプリントが米通信・メディア再編に組み込まれる?」に書いてありますが、スプリントに米CATV最大手のコムキャストと同2位のチャーター・コミュニケーションズが共同で、スプリントの通信設備を借りて業務展開する提携話が持ち込まれていました。

 もともと移動通信会社とCATV会社はビジネスの親和性が大きく、経営統合のメリットも大きいとされています。そこでスプリント(ソフトバンク)はTモバイルとの交渉を中断して、大手CATV(チャーター・コムニケーションズの方だったようです)との経営統合を持ち掛けます。要するに二股をかけたわけですが、あえなく両方とも頓挫してしまいました。

 そこで孫社長は「CATVだったらどこでもいいから早く提携しよう」と考え、出てきたのがフランス系のアルティスUSAだったわけですが、最大手2社との差が大きすぎてほとんど意味がありません。またこれでソフトバンクはスプリントを売却できる可能性がほとんど消滅してしまいました。

 ソフトバンクの2017年4~9月期連結決算に話を戻しますが、今回から10兆円のSVFが連結されており、そこに組み込むはずのエヌビディアの評価益として1862億円が計上されています。しかしこれがソフトバンクの利益なのか、(自身も含む)SVF投資家の利益なのかが、依然としてよくわかりません。

 しかし最大の疑問は、アリババ株式に関連するデリバティブ損失として計上されている5084億円です。これで最終純利益が大きく減少してしまいました。

 ソフトバンクは2016年6月に将来の買収資金を確保するためにアリババ株式の一部を売却しています。最終的に34億ドル分をアリババ(自社株買い)やシンガポール系の政府ファンドに売却し、66億ドル分をアリババ株式(正確にはADR)の他社転換社債を発行し、合わせて100億ドルを調達しています。

 当時のアリババの株価は77ドル前後で、ソフトバンクのアリババ株の取得コストは総額で105億円だったため、売却金額はほとんど売却益だったはずです。ソフトバンクは2016年4~9月期に2381億円の売却益を計上しており、34億ドル分の売却益とするとだいたい辻褄が合います。つまり66億ドル分の売却益は一切計上されていません。

 この66億ドルの他社転換社債は、利率が5.75%、償還まで3年、投資家は償還時に現金かアリババ株式かその組み合わせで受け取るもので、(細かい計算は省きますが)転換価格は1株=100ドルに設定されているはずです。

 当時の発行資料では、償還時にソフトバンクの関連会社が現金か、アリババ株式か、その組み合わせを「決める」とはっきり書かれています。つまり投資家は選べないことになり(だから利率が5.75%と格付けがBBクラスのソフトバンクとしても高い)、当然にソフトバンクは3年後にアリババの株価が100ドルを上回っていれば現金で償還し、下回っていればアリババ株式で償還するはずです。

 じゃあソフトバンクはこの償還に合わせて何かヘッジしておく必要があるかといえば「全くない」はずで、2017年4~9月期に計上している5084億円もの損失が一時的にも出てくるはずがありません。

 直近のアリババの株価は187ドル前後で、本年1月下旬に転換価格の100ドルをこえています。ヘッジファンド的に考えれば、アリババの株価が100ドルをこえれば少しずつ売り上がり、その後に100ドルを下回れば買い戻すことを繰り返せば、ほぼリスクなしに利益を積み上げられます。しかしインサイダー情報もある(アリババの馬会長がソフトバンクの社外取締役)ソフトバンクがそうするわけにもいきません。

 まあソフトバンクはこの他社転換社債分を除いてもまだアリババの27%を保有しているため、直近の含み益は14.5兆円になっているはずです。課題であると言われている15兆円の有利子負債とほとんど同額となり、よくわからない5000億円くらいの損失など気にする必要はないのかもしれません。

 そんな感じのするソフトバンクの決算発表でした。


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コメント
あるAIによるとソフトバンクの株価は100,000円を目指すと出ている。
アリババのスキームですが3年後に計上されるデリバティブ評価損は9億ドルで固定されています。
一方でアリババの株価を毎期評価して株が高いときは評価損、株が安ければ評価益を計上しますが、最終的にはクローズした時点で評価損益が通算されて当初の9億ドルの損失が確定するはずです。

では、なぜこのような複雑で一見わかりにくいスキームにしたのかといえば、日中での租税回避が目的ではないかと思っています。
(有利子負債-運転資金)÷cf
この返済年数が適正であれば問題ない。

含み益は参考。
逆にだって動くわけだから。
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