闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

あの事件はどうなった?  その1

2010年11月10日

「乗っ取り屋の影におびえたブルドックソースの対応は正しかったのか?」
 
 新しく、「あの事件はどうなった?」のシリーズを始めます。まるで週刊誌のゴシップ記事のようなタイトルなのですが、決してそうではなく、過去に起こった経済事件(別に、全てが犯罪事件と言う意味ではありません)を遡って検証することにより、改めて評価をしてみたいと思います。マスコミは、その事件が起こっているときは活発に報道するのですが、過ぎてしまうとほとんど目もくれません。そのうち忘れてしまうものなのです。それではいけないので、「今考えても、あれは重要な事件であり、今も示唆に富んでいる」といったものを取り上げてみたいと思います。

 ブルドックソース(東証2部上場。コード2804 以下ブルドック)と、スティールパートナーズなるファンド(以下スティール)の一連の動きは以下の通りです。

 平成19年5月16日に、スティールがブルドックの全株を対象に公開買い付け(TOB)を発表しました。当時のブルドックの発行株数は1901万株で、TOB価格は1584円でした。この価格は直近の株価に約20%のプレミアムを乗せたもので、全株取得すると300億円程の資金が必要でした。もっとも、その時点でスティールはブルドックの発行済株数の約9.3%にあたる178万株を保有しており、取得原価も17億3000万円程(従って、一株のコストは約972円)と大量報告書に記載されていました。

 平成19年6月7日に、ブルドックの取締役は、このTOBに対し、「ブルドックの企業価値を棄損し、株主の利益を損なうものである」として反対する旨の決議を行いました。
 また、同年6月24日開催予定の定時株主総会の承認(特別決議)を条件とし、同年7月10日現在の株主に対し、1株につき3個(3株)の新株予約権を無償で交付し、新株予約権の行使価格は1株につき1円とする、と決議しました。

 さらにブルドックは、スティール及びその関係者(以下、スティール関係者)以外の株主から新株予約権を取得し、対価としてブルドック株を交付するが、スティール関係者からは、対価として新株予約権1個(1株)につき現金396円を交付する、とも決議しました。要するにスティール関係者以外の株主に対しては、実質4分割しますが、スティール関係者の株式は、その4分の3を強制的に買い上げるという内容です。

 平成19年6月24日の定時株主総会で、これらの議案は83.4%という圧倒的多数の賛成を受けて可決されました。

 平成19年6月28日に、スティールはこの新株予約権発行を「株主平等の原則に反する」、また「著しく不公正な方法によるもの」として発行差止を求める仮処分申請を行いましたが、同年6月28日に東京地裁が、同年7月8日に東京高裁がそれぞれ却下しました。スティールは最高裁に特別抗告しましたが、これも却下されました。

 まず、それぞれの裁判所における却下理由は大体同じようなもので、明確な説明なしにスティールによるTOBを、「企業価値を棄損し、株主の利益を損なうものである」というブルドックの主張を全面的に認め、その唯一の理由として「株主総会で圧倒的に支持された」ことを挙げています。

 また、高裁の却下理由の中に、スティールを「濫用的買収者」として、やはりこのTOB
により「企業価値を棄損し、株主の利益を損なうもの」と断定しています。(最高裁の判断では、この点だけは消えています。)

 さて、こういった流れについてどう考えればよいでしょうか?
 お断りしておきますが、私はどちらかと言えば外人が嫌いですし、肩を持つことは一切ありません。スティールの行動についても決して好意的には見ていません。しかし、本件に関しては、どう公平に考えても以下の通りです。

1)「濫用的買収者」と言うのは、英語の「Green Mailer」のことで、企業の株式を買い占めて株価を吊り上げて、後に高値で会社に買い取らせたり。企業を乗っ取って企業の有形無形の財産を散逸させることを目的とすることを言います。スティールはTOBを宣言しただけで、「企業価値を棄損させたり、株主の利益を損なう」行動は一切していません。

2)買収の対象になった企業の取締役会は、常に株主の利益を最優先に考えなければなりません。つまり自身の保身を優先してはならないのです。だから「企業価値を棄損させ、株主の利益を損ねる」と主張しているのですが、それを客観的に証明出来る事実は何一つありません。

3)それでは「企業価値を棄損させ、株主の利益を損なう」ことを避けるはずのために、ブルドックが取った行動のコストは、平成20年3月期の有価証券報告書にはっきりと出ています。
スティール関係者から買い取った新株予約権に支払った金額全体を、そっくり自己新株予約権償却損として21億1400万円(スティールの当時の持ち株178万株の3倍の新株予約権を1個(1株)396円で買い取って償却したため、ぴったり計算が合います)、それに公開買い付け対応費用(大半がファイナンシャルアドバイザーとしての野村証券と、法律事務所に支払ったもの)として6億7400万円の、計27億8800万円が特別損失として計上されています。これはもちろん現金の流出を伴い、株主資本の棄損となります。

4)ブルドックの一般株主は、TOB価格の1584円で売却できるチャンスを放棄した上で、持ち株が4倍になりました。まさに換算すると396円です。しかし現在の株価は180円です。もちろん株価はその時の環境によっても左右されますが、明らかに株主資本が27億8800万円減ったことの影響もあります。(現在の発行株数6977万株で割ると、1株につき40円くらいが棄損されたわけです)

5)一方、スティール関係者は、その後また持ち株を増やしたりしていたようですが、結局2007年中に全株を処分したようです。ざっと12億円程度の利益を得たはずです。

 結局、ブルドックの取った「企業価値を棄損し、株主の利益を損なう」ことを避けるはずの行動が、見事に株主の利益を損ない、スティールのみを利したのです。これは、たまたま株価がそう動いた結果ではなく、ブルドックの(そして裁判所が認めた)行動そのものが、その結果を招いたのです。

 もっと分かりやすく言うと、「企業価値と株主の利益」を守るという名目のもとに、取締役会が保身を図り、結果「企業価値も株主の利益」も損なったということです。

 似たようなケースは、他にもあるのですが、また次の機会にします。またスティールパートナーズのようなファンドは、一応「アクティビスト」と分類されます。これもまた、「世界のファンド事情」の中でもっと詳しく書こうと思います。

Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:0 | TrackBack:0
関連記事
コメント
コメントの投稿
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

07月 | 2017年08月 | 09月
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム