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東芝が半導体事業会社を売却

2018年06月12日

東芝が半導体事業会社を売却


 東芝が懸案となっていた半導体事業会社(東芝メモリ株式会社)の売却を2018年6月1日に完了させました。最大の障害と思われていた中国の独占禁止法による審査が5月17日に承認されたため、そこから大急ぎでクローズ(売却完了)させたようです。

 そもそも半導体事業の売却は、2016年12月末に発覚した原子力子会社・ウェスティングハウスの巨額損失により東芝本体が2017年3月期で5529億円もの債務超過に陥ったため、上場を維持するには2018年3月期で債務超過を解消させる必要があったからです。

 ところがこの債務超過自体は、2017年12月に払い込まれた6000億円の第三者割当増資で解消しています。つまり東芝はこんな時期になって稼ぎ頭の(注)半導体事業会社をわざわざ売却する必要はなかったことになりますが、それでも三井住友銀行出身の車谷(くるまたに)CEOを中心とする東芝経営陣は、予定通りベインキャピタルを中心とした日米韓連合に2兆円で売却したことになります。

(注)2018年3月期に半導体事業会社は4605億円の営業利益を稼ぎ出していますが、これは売却予定の事業であるため東芝本体の2018年3月期の連結決算から「まるまる」外しています。その結果、同期における東芝本体の連結営業利益はわずか640億円しかありませんでした。

 ところでこの6000億円の増資は、全額がゴールドマン・サックスのアレンジで「物言う株主」を含めた海外ファンド60社に割り当てられています。またこれ以外に市場で買い集めていた海外ファンドも含めると、発行済株数の半数以上が「物言う株主」を含めた海外ファンドが保有していることになるはずです。

 この日米韓への半導体事業会社の売却は、昨年(20717年)10月24日に開催された臨時株主総会で承認されていますが、この6000億円の第三者割当増資はその後に発表されて払い込まれているため、当時の東芝の株主の中には海外の「物言う株主」の持ち株比率はまだ少なく、すんなり承認されたようです。

 さて同じく6月1日にリリースされた東芝のたった4ページのIR資料から、この複雑怪奇な半導体事業の売却スキームを解明してみましょう。実はこれまでも全体の構図を正しく伝える資料が東芝から出ておらず、細部にわたって「わからないこと」がたくさんありました。そのすべてではありませんが、かなり明らかになりました。

 まず東芝は半導体事業会社の譲渡に先立つ2018年3月29日に、半導体事業会社からその他余剰資本金を原資とする特別配当金を1180億円受け取り、2018年3月期に特別利益として計上しています。

 これは2018年3月期における半導体事業会社の営業利益が4605億円であるため、税金などを控除してもかなりの金額が資本勘定に組み込まれていたはずです。半導体事業会社は2018年3月期の全期間において東芝の100%子会社だったため、資本勘定全額を特別配当として吸い上げてもよかったはずですが、ベインキャピタルとの株式譲渡契約により1180億円だけ受け取って、あとは「持参金」として置いてきたようです。

 そして東芝自身が半導体事業会社の受け皿となる特別目的会社に対し、なんと3505億円も再出資しています。その内訳は特別目的会社の議決権がある普通株を1096億円(議決権比率が40.2%)、転換権付優先株式で2409億円(同じく発行される優先株の40.8%)となっています。

 またHOYAが全額普通株で270億円(議決権比率が9.9%)出資し、ここまでが日本勢で確かに議決権の50.1%を維持しています。

 さらに将来的に資本参加を検討し、東芝が保有する議決権を間接的に行使できる「指図権」を産業革新機構と日本政策投資銀行が、議決権ベースで16.7%ずつ付与されています。しかし「指図権」といっても聞いたことがなく、それこそ産業革新機構も日本政策投資銀行も、全くリスクを取らず儲け分だけ横取りするスキームでしかありません。

 海外勢ではベインキャピタルが2120億円、韓国のSKハイニックスが最大の3950億円を出資しますが、これで議決権の49.9%であるため単純計算ですが普通株は1360億円となるはずです。

 ベインキャピタルとSKハイニックスの議決権が公表されていませんが、同業のSKハイニックスは独禁法の関係で向こう10年間は15%以上の議決権を保有できないため、普通株は最大でも408億円となり、ベインキャピタルは残る952億円となるはずです。

 そしてアップルなど米4社が優先株で4155億円、それに邦銀が6000億円を特別目的会社に貸し付けて、合計が2兆円となります。

 この中で気になるところは、東芝はこの半導体事業会社の売却で約9700億円の売却益が出るようですが、その同じ東芝が40.2%の最大議決権となる(優先株も含めて)3505億円も再出資しています。つまり40.2%もの議決権を取得する東芝は、その半導体事業会社の売却スキームの決定に優先的地位にいたはずで、売却価格などの決定を有利に進めることができたはずです。だとすると問題になるはずです。
 
 何よりも東芝は半導体事業会社を2兆円で売却して9700億円の売却益を計上しておきながら、自らが3505億円も出資したことになります。普通であれば最初からこの3505億円を売却対象から外しておくべきで、この3505億円分だけ売却益が大きくなっていることになります。厳密に言えば決算操作に該当するはずです。

 最後に東芝はこの半導体事業会社の売却で、なんと1200億円もの報酬をアドバイザーに支払っています。2兆円の6%となるため、東芝は売り手と買い手の双方の報酬を支払っていることになります。


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コメント
自業自得
東芝の半導体事業が稼ぎ頭で、売却はもったいない、という声を聞きますが、そもそも、第一次安倍政権のときに国が主導して、他国の原発会社を買わせたツケが来ているだけです。東芝も悪いですが。

今も、安倍政権は、トルコやイギリスへの原発輸出を焚き付けていますが、今度は日立や三菱重工を潰す気なのでしょうかね?

そういう本質論をやらずに、対処療法で東芝を守ろうとしているだけ。その結果、稼ぎ頭の半導体を売るはめになる。

安倍政権は何がしたいのでしょうか?
資金調達できない東芝にメモリを持たせておいてもジリ貧なので、日本の製造業のためにも売却したことは英断だったと思います
物言う株主の皆さんは売却益を自社株買いで還元しろと言っていますが・・・安直に儲けられてしまった感がある
サラリーマンバンカー
何故、日本のバンカーは海外ファンドに奉仕するのだろう。日本は銀行をはじめ多くの会社は世渡りの術が長けている人が出世する仕組みだから、その習性が抜けないのかなと思います。
結果、東芝株は買いですか?
東芝、7000億円自己株取得方針

理解できぬ。。
実質的には、メモリの売却が間に合わないので上場廃止回避のために借金したようなものだと思えば・・・
理解はできるけど、してやられた感があります
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