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米国債券王・グロス氏の敗北宣言の意味するもの

2011年09月02日

米国債券王・グロス氏の敗北宣言の意味するもの

 本日は昨日に引き続き「旧・日債銀への無罪判決とその背景 その2」として、検察庁と旧大蔵省との暗闘を書こうと思っていたのですが、あまりにも書くべきことが多すぎてうまくまとまりません。
 少し、時間を空けて改めて書こうと思います。

 そこで本日は、昨日(8月31日)の日経新聞夕刊に出ていた「米国債券王・グロス氏の敗北宣言」について、その意味を考えてみます。

 ビル・グロス氏は、世界最大の債券ファンドを持つ運用会社PIMCOの最高投資責任者で、米国債券市場で最も影響力のある人物です。
 グロス氏は評論家ではなく、自身で18兆円を超える債券ファンドを運用しており、私も非常に尊敬している米国人の一人です。(私は、日米とも「評論家」が大嫌いです)

 そのグロス氏のご託宣は、本年2月に「米国国債は将来的に債務不履行が避けられず、格下げのリスクが増大している」として、自身の運用する巨額の債券ファンドから米国国債をすべて売却してしまいました。
 この時点での米国10年国債の利回りが3.6%程度でした。

 そして本年6月に、「米国国債を6000億ドル買い入れる量的緩和(QE2)が終了すれば、米国国債は政府という買い手を失い、利回りは上昇(価格は下落)する」と警告しました。
 この時点での米国10年国債の利回りは2.9%程度でした。

 ところが、その後ビル・グロス氏の言うとおりQE2が終了し、米国国債が格下げになったにもかかわらず、米国10年国債の利回りは一時2%を割り込み、現在も2.2%程度なのです。

 そこで、潔く「敗北宣言」を出し、投資家に詫びたようです。

 大変僭越なのですが、本誌6月19日付け「債券相場の行方」で、はっきりとグロス氏の見立てに反対であると書きました。

 別に本誌は、たまたま書いたことが「当たっている」と大騒ぎする「予想紙」ではないので自慢するつもりは全くありません。
グロス氏は、「10年以上陥っている」日本経済と債券市場の状況に、米国も陥るとは認識していなかっただけなのです。

 そして重要なことは、グロス氏の「敗北宣言」とは、早くもこれを認識したということなのです。

 つまり、量的緩和を含む金融緩和や財政拡大など、考えられる政策すべてを投入しなければ、ますます経済が低迷し、国債利回りが低下し、結果ますます財政赤字が拡大して、また経済が低迷するということを認識したはずなのです。

 ここで、米国・ユーロ圏・日本がそれぞれ大胆な金融緩和(量的緩和)と財政拡大をとらないと、世界経済が沈没してしまいます。
 米国・ユーロ圏・日本の経済が沈没するということは、新興国経済も資源価格も沈没するのです。

 グロス氏は、米国の金融政策を含む政策決定に重要な影響力を持っています。米国がここで大胆な金融量的緩和と財政刺激策が必要であると認識したはずなのです。

 日本は、この状態に陥って10年以上経過する「大先輩」なのですが、いまだに量的緩和の「量」は2006年までの量的緩和のピークに並んだだけであり、財政政策は相変わらずの「財政再建」「緊縮財政」の大合唱なので、何も認識していないのです。

 ユーロ圏は、今のところ緊縮財政でユーロの価値の維持を優先しているようです。

 現在は世界経済が同時に回復する余裕はありません。従ってここでまた日本の政策決定が米国やユーロ圏に遅れると、もっともっと「円高」などの弊害が出てくるのです。

 さしあたって米国では、9月20日・21日のFOMCで何らかの金融量的緩和策がとられ、財政政策でも何らかの投資・雇用・消費などを刺激するような減税策がとられると考えます。

 日本でも、せっかく新政権が誕生するのですが、さてどうなるのでしょう?

平成23年9月2日

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コメント
>グロス氏は、「10年以上陥っている」日本経済と債券市場の状況に、米国も陥るとは認識していなかっただけなのです

確かに米国債格下げ後、グロス氏の予測とは全く逆な展開になっていますが、今後の展開で日本国債と同様に当てはめられるものでしょうか。

 先日の記事では、>日本は潤沢な対外資産を持ち、通貨が安定し(これだけ円高なので安定しすぎています)、かつ、対外負債が少ない(つまり外国保有の国債残高が少ない)唯一の国だからです。

全くその通りだと思います。
だからまだ今のところまだ日本国債は安定している。
しかし莫大な対外債務を持つ米国は違います。
今現在米国債は買われていますが、それは一時的なもので日本国債とは違い、近い将来やはりグロス氏は正しかったとなるのではないでしょうか。
グロス氏の予見は外れましたが、行動自体は正しかったのではないかと思う次第です。
もはや単純な損得勘定で動けるそんな時代ではなくパルス状に発生する市場の混沌についていくらか警戒を強めている、そんな印象を感じます。
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