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証券取引等監視委員会による香港の資産運用会社の「処分」

2011年09月19日

証券取引等監視委員会による香港の資産運用会社の「処分」

 9月15日に、証券取引等監視委員会(日本のです)が以下の発表をしました。

 香港の資産運用会社(Oasis)が、2006年7月に行った日本航空の7億株の公募増資に際し相場操縦を行った疑いがあるとして、香港の金融当局である証券先物委員会(香港SFC)が、同社と最高運用責任者のSeth Fisher氏(実際はOasisのオーナーです)に対し戒告処分と、それぞれ750万香港ドル(約7500万円)の制裁金を課したという内容です。

 つまり、香港の金融当局が香港の運用会社と責任者に処分を課しただけのことなのですが、対象が日本株の取引であり日本の証券取引等監視委員会が、「香港の金融当局と緊密な連絡をとり今回の処分に至ったものである」と誇らしげに発表しています。

 当然、今回の決定は香港の金融当局によるもので、制裁金も香港当局に納付され日本には1円も入ってきません。それでも日本の証券取引等監視委員会が少なからずのコスト(税金です!)をかけて香港の金融当局に「協力」したのです。

 最近の東京電力などの大型増資に際し、必ず海外からの「貸株による売却」が出ることを当局、特に東京証券取引所が不快感を示しておりメンツにかけても処分の事例を作りたかったわけで、比較的緊密な香港当局に強力に働きかけたことは容易に想像できます。

 それでは、数ある類似の事例の中で、何故この件だけが選ばれたのでしょう?

 問題となった日本航空の2006年7月の増資ですが、直前に開催された株主総会で何の予告もせず、突然7億株(30%以上の希薄化)もの大型増資を発表し株価の急落を招いた非常に問題のあるものでした。

 すでに経営に問題を抱えていた日本航空では、当然まともな投資家で吸収できる量ではなく、結果的に大半が海外のヘッジファンドなどにオファーされました。結局、増資発表から払い込みまでの期間に大量の株数が市場で売却され(正確には貸株を調達した売却)、その資金で払い込み(実際は貸株の返済)が出来ただけの話なのです。

 つまり、この仕組みを無視しては成り立たなかった増資だったのです。

 その負担は、すべて日本航空の従来からの株主が被ったのです。日本航空はさらに2010年1月に経営破たんし、全ての株式が紙くずになりました。だから、日本の当局としては(非常に遅まきながらですが)何らかの形で「犯人」を捜したかった銘柄なのです。

 本件に関して「日本航空株の株価を引き下げることにより、公募価格を引き下げ、結果的に日本航空の増資手取りを減額させた」とあるのは、非常に公平を欠く表現と言えます。

 なにはともあれ、Oasisはこの日本航空の公募増資を2億株も申し込んでいたのです(実際に割り当てられたのは7000万株だったそうです)。

 尤も本件に関しては、Oasisも値決め日の大引け直前に大量の「引け成り買い」の注文を取り消し、強引に売り崩すような売り方をしたことも事実のようで、これが今回の処分の正式の理由となっています。

従って、「外国人投資家による公募発表銘柄の貸株を利用した売却と、引き受けた公募株での貸株返済による単なる鞘稼ぎ」とか「外国人投資家だけに認められている事前需要予測の段階での売却」などの本質的な問題に切り込めたわけでも何でもないのです。

 とにかく理由は何でもとにかく処分さえ出してしまえばよい、ということなのです。

 もうひとつ見逃せないのは、Oasisの日本市場おける存在感です。

 Oasisは2002年ころに、今回の処分の対象にもなったSeth Fisherによって香港に設立されました。
 Seth Fisherは、それまではヘッジファンドHighbridgeの日本株運用主任で、多分日本株式市場における最も活発な外国人投資家だったはずで、いわゆる日本企業の発行する「下方修正条項付き転換社債」の引き受けでもHBK(本社ダラス)と並ぶ最大手でした。

 独立したSeth Fisherは(資金面からサポートしたのがAIGだったはずです)活発に活動を始めるのですが、最大のミスは日本に駐在員事務所を置き、そこに日本語が堪能ではあるもののほとんど金融知識のない英国人を代表としたことです。

 つまり、あっという間に駐在員事務所は日本の怪しげなブローカー達の巣になってしまい、株多くの問題企業のファイナンス(おもに転換社債)が持ち込まれ、実際引き受けられていくのです。

 ブローカー達にとっては、問題企業の中身をうまく隠して素人に日本語で説明すればよいので、赤子の手をひねるようなものだったのでしょう。そしてブローカー達は問題企業に入った資金の一部を、これまた勝手に持ち出したりして行くのです。

 そこから「鷹山」「モック」「オープンインタフェス」など倒産や上場廃止等で回収不能となった転換社債が山のように出てしまったのでした。

 当然、Seth Fisherとしては法的手段を使ってでも回収に走らなければならず、幾つかの係争を今も抱えていますが、その際に間に入ったブローカーなどの不正が露呈しているケースもあるようです。

 これはあくまでも個人的な推測ですが、今回の処分のきっかけはこういったブローカーなどからの「タレこみ」の可能性があると思います。

 何はともあれ、証券取引等監視委員会の「誇らしげ」な発表の割には、何の本質的な解決にもなっておらず、数少ない外国人の活発な日本株投資家のひとつを追い出してしまった結果になるだけのようです。

平成23年9月19日

 9月16日付け「三菱UFJ」による「野村証券」買収、について買収の可能性が50%以上とした根拠が客観的ではないというご意見を頂きました。
 
 最大の根拠は、日本の金融行政は常に「株式市場や証券会社は常に監視していないと悪いことばかりするところ」で「銀行は常に正しいことをしており報告も怠らない」という基本的な考えで、その銀行の中でも最優等性の三菱UFJが、証券会社最大手の野村証券を買収することは「証券市場をより強力に当局の監視下に置く」という観点から大賛成であり、むしろ積極的に後押しする筈だと言うことです。

 米国では金融危機前後に全ての投資銀行が、銀行傘下になる(ベアースターンズ、メリルリンチ)、倒産する(リーマン)、自ら銀行持ち株会社になる(ゴールドマン、モルガンスタンレー)と、純粋の自己資金を使って証券業務を行う大手投資銀行は全て姿を消しています。日本の当局もこれが念頭にあるはずです。

 ご意見ありがとうございました。

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コメント
バックナンバーのどこかで、円の基軸化のメリットを今後書きますと記載されていたのですが、まだのようなので無礼とはわかりつつ催促した次第であります。
どうしても知りたいです。
よろしくお願いします。
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