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ユーロの話

2010年11月16日

ユーロの話

 為替の話といえば、ついドルのことになってしまうので、たまにはユーロの話をしてみようと思います。ユーロが発足してから10年ちょっとのため、その歴史的背景も交えながらユーロについて考えてみたいと思います。

 1999年1月1日に、まず決済通貨としてのユーロが導入されました。当初は、単年の財政赤字がGDPの3%以下、累積財政赤字が60%以下、インフレ率が域内の最も安定している3カ国を1.5%以上上回らない、などの基準を満たしたドイツ、フランスなど11カ国が構成通貨となりスタートしました。記念すべき初レートは1ユーロ=1.1792ドルで、対円では132円くらいでした。
 その後2001年1月1日にギリシャが追加され(その後、ギリシャは導入時に財政基準を満たしていなかったことがわかったのですが、罰則規定が決められていなかったため、そのままになりました。)、現在は16カ国となっています。(注)
 また、2002年1月1日から通貨としてのユーロの流通が始まりました。

 ところが1999年1月の発足直後から、ユーロはほぼすべての通貨に対して下落し始め、2000年10月26日に1ユーロ=0.8252ドル、対円でも90円割れとなってしまいました。
 その後は、いままで為替レートが不安定であるため、比較的高い金利でなければ資金が調達できなかったスペイン、ポルトガル、アイルランド、イタリアなどがユーロに統一されたため、今までにない低金利で資金が調達できるようになり、景気が上向き、結果ユーロ圏全体の景気が良くなり、ユーロ圏以外からも資金が流入して、ユーロは長期にわたって上昇を始めます。リーマンショック直前の2008年7月15日に1ユーロ=1.6038ドル、対円では170円直前まで上昇しました。
 そのころまでは、ユーロ圏は、どんどん賃金の安い東欧諸国にまで拡大させ、為替リスクをなくすることにより、それらの地域に資金を流入させて生産設備を移し、結果域内の生産コストを引き下げて、さらなる発展をしようという拡大志向でした。

 ところが皮肉にも、米国発のサブプライム問題で欧州の銀行も多大な被害をこうむっていたことが分かり、ユーロは急落し、高値を付けてからわずか3カ月ほどのうちに、1ユーロ=1.60代から1.24ドル台へ、対円はドルも急落したため下げ幅が増幅され170円直前から112円台へとの大暴落となりました。
 その後は、一時的な回復はあったものの、2009年秋から欧州の銀行が大きな貸出残を持つドバイの経済危機から始まり、2010春にはギリシャ危機が表面化して再び急落し、6月には1ユーロ=1.2ドル割れとなりました。そのあとは逆に米国経済の低迷と急激な金融緩和で1.4ドル台まで反発しました。対円では8月に105円すれすれまで落ちたあと114円台まで反発しています。

 特にここ一週間くらいの間は、ギリシャだけでなく、アイルランド、スペイン、ポルトガル、そしてイタリアと、かつてはユーロ加盟の恩恵を最大に享受して域内、域外からの資金流入で潤った諸国が、気がつけば財政規律が緩みっぱなしになっており、最近の景気後退で一気に財政危機が起こってしまったのです。同じユーロ建てであるにもかかわらず、10年物のドイツ国債が2.5%程度であるのに対し、アイルランドは8%台、ギリシャは11%台、イタリア、スペインも4%台となっています。

 景気が後退し、財政赤字が拡大した場合の処方箋は金融緩和と並んで、通貨の切り下げが有効です。ところがユーロには参加規程はあっても脱退規定がないため、抜けるに抜けらず、またユーロ構成レートの変更規定もないため実質切り下げもできず、ひたすら今の為替レートで頑張らなければならないのです。
 もうひとつの金融政策ですが、ユーロ圏の金融政策は欧州中央銀行(ECB)が一元的に決定します。そしてECBは米国FRBと違って、一国のみの中央銀行ではないため、特定の国のためだけに極端な金融緩和をすることができないのです。

 つまり、ECBはFRBに比べて、極端な金融緩和ができないため、ユーロは相対的にドルに対して強含みに進むと考えていいでしょう。またいくらギリシャやアイルランドの財政が破綻したとしても、それ自体は域内の問題であるため、通貨としてのユーロにそれほど壊滅的なダメージは与えないはずです。

 それからもうひとつ、ドルとユーロの関係は、ヘッジファンドにとって非常に大切な基本シナリオとなります。前回も言ったかもしれませんが、ヘッジファンドは基本シナリオを一度決めたら簡単に変えません。ECBが構造的に、量的緩和を含む極端な金融緩和に踏み込めないことは明白な事実であるため、米国の金融緩和(量的緩和)が続く限りは、ユーロ買い・ドル売りの基本シナリオは続ける筈です。
一番の財政赤字を抱える日本の円が一番強いことを考えても、財政赤字の大きさが為替レートに影響を与えることはありません。要は、どちらからどちらへ資金が流れるかで為替レートは決まります。だとすれば、当分の間は、少なくともユーロは対ドルで弱くはなりません。

 最後に、世界の外貨準備に占める通貨の割合ですが、ユーロが発足した1999年から2009年までの間、米ドルの比率は70.9%から61.5%へ、ユーロは17.9%から28.1%となっています。ユーロの比率がこれ以上大きく増えることもないかもしれませんが、少なくともドルの比率が再び上昇することもなさそうです。
 特にここのところの米国の極端な金融緩和で、アジアをはじめとする世界の中央銀行の外貨準備がとりあえずドルで増えているはずです。その中から今後ユーロに振り替わる分がかなり出てくるはずです。

 結論としては、量的緩和が構造的にできないユーロは当分の間、対ドルで弱くはなりません。対円では、まず対ドルを考え、それをやや強含みにしたのがユーロであると考えれば良いということになります。従ってユーロの基本シナリオを変える必要が出てくるまで、ユーロについて書くことはありません。これからの為替のコメントは、やはりドル・円に絞って書くことにします。


(注)当初11カ国は、ドイツ、フランス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、スペイン、ポルトガル、イタリア、アイルランド、オーストリア、フィンランド。その後加入したのが、ギリシャ、スロベニア、キプロス、マルタ、スロバキア、で計16カ国。
来年からエストニアの参加が決まっています。
 また、参加していない主な国は、それぞれいろんな理由があるのですが、イギリス、ノルウェー、スイス、スウェーデン、デンマークなど。すべて近々参加する予定もありません。
 また、今後参加議論が出てくるかが注目されているのが、イスラム国のトルコと、旧ソ連のウクライナです。

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