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ソロスの錬金術  その2

2010年11月19日

ソロスの錬金術  その2

 昨日お約束した通り、「グローバルマクロ」タイプのヘッジファンドの考え方、ポジションの作り方などをご紹介します。ソロスになったつもりで、なんて言いましたが、ヘッジファンドの基本的なシナリオを類推することは、そんなに難しいことではありません。
要は、そのシナリオを基に、どういったポジションをいかに思い切って取るか、ということと、シナリオの変更が必要になる兆候をいかに早くつかむか、の2点によって生き残れるか、消えてしまうかの違いが出てくるわけです。言い換えればチキンレースなのです。

 ただ、一般的に言えることは、彼らのシナリオは驚くほど単純で、一度決めたら、それに沿ったポジションを思いきって取ります。そしていくつかのチェックポイントを決めて、シナリオ変更の必要性を測るのですが、普通一度決めたシナリオはめったに変更しません。
一例をあげますと、ドルとユーロの関係では、ユーロの発足直後にユーロが弱含みになったあたりから、ずっと「ユーロは対ドルで強くなる」と言い続けていました。実際に2000年10月の1ユーロ=0.8252ドルの安値から、2008年7月の1ユーロ=1.6038ドルの高値まで、実に8年にわたって、ずうっと同じことを考え、また実践してきたはずです。

その理由は単純で、米ドルと並ぶ経済規模を持ったユーロ圏の通貨なので、各国の中央銀行を含む世界の投資家は、ある程度、ドルに替えてユーロを保有しなければならない、ということと、ユーロ圏は従来のERM(欧州為替相場メカニズム)では自国通貨の価値の維持のために、金利を高めに維持するとか、貿易赤字が増えないように努力をしなければならなかったところ、ユーロは通貨そのものが統合されたので、基本的に各国はこういった努力が要らなくなり、結果経済が上向くだろう、の2点でした。

この2点は、見事にその通りになって、ユーロは長期にわたって上昇したのですが、その間ポジションを持ち続ける忍耐があったか、と、2008年後半の急落をどの程度以前に予測して対応を取っていたか、によって生き残るところと消えてしまうところが出たのです。
まあ普通の人間がやったら、確かにユーロは買っても、とっくに少しの利益で売ってしまい、その後ずうっといらいらしながら上昇するユーロを見ながら何もできず、とうとう辛抱しきれなくて買ったとたんに大暴落、ということになりかねないのです。

ソロスの言う「再帰理論」の、「相場は一度動き始めると、周りの人たちの言動で、ますます同じ方向に動き、耐えきれなくなって壊れるまで続く」と言うのは、こういった人間の心理を見事に現わしているのです。

じゃあ、現在の世界の為替に対するシナリオはどうなっているのでしょうか?

基本的には、世界で一番、金融が量的にも緩和されており、また、十分に供給される資金(ドル)を使って世界中に投資をするための情報もノウハウもある米国の通貨、つまりドルが一番売られるであろうということは変わらないと思います。
 問題は、ドルからどこに行くか、ですが、やはり大半は市場規模が大きく、規制が少なく、収益物件が多く、金融の緩和の程度が米国ほど極端ではない、ということで欧州、つまりユーロに行くはずです。
新興国や資源国に行く分は、やはり流動性から考えて限定的のはずです。市場の大きさという意味では、日本円も一応候補になりますが、金利を含む収益性が低いということと、すでに対ドルでは史上最高値に近づきながら反落した、というテクニカルな理由から、メインの行く先とはなりません。

 つまり、対ドルで、ユーロがここから下がれば、ドル売り・ユーロ買いのポジションを増大させる。つまりユーロの買い下がりが基本シナリオだと思います。
 対円では、すでに十分なドル売り・円買いのポジションがあったのですが、現在縮小しているはずで、多分85円くらいになれば一度すっかり解消して、次に備えるのだと思います。つまり円はあくまでもテクニカルな取引対象で、ユーロのようにファンダメンタルで大きく持つポジションではないと思います。

 そして、現在の為替の対する最大のチェックポイントは、米国の金融緩和、特に先日の国債6000億ドルの買い入れという量的緩和に対する見直しが入るかどうかです。普通ヘッジファンドは、こういう場合、見直しが入るか入らないか、という無意味な予想は絶対にしません。ただ、見直しが入った場合はどうする、入らなかった場合はどうする、とあらかじめ決めておき、あとはいかに政策決定というインサイダー情報を早くつかむか、ということに取りかかるのです。
 もうひとつ、ユーロ圏のアイルランド、ポルトガル等の財政危機の問題ですが、基本的にはユーロ圏内部の問題で(つまりユーロを一国とすると国内問題)、最悪の場合でもユーロ全体のファンダメンタルズが極端に悪くなるとか、ユーロから資金が逃げ出すということは、考えていないはずです。一応チェックポイントには入っていると思いますが、基本シナリオの変更には至らないと思います。

 株式市場について書く紙面がほとんどなくなってしまったのですが、日本株式についてひとつだけ言っておきます。ヘッジファンド(日本国外の機関投資家もそうですが)は、日本株式をドル建てでみます。従って、もし円安になれば、日本株は上がります。これは、「円安になれば輸出企業の業績が良くなって、その結果株価は上昇する」という、評論家的な理由ではなく、単純に「円安になれば日本株がドル建てみて割安になり、世界を回っているあり余る資金(普通ドル)の一部が回ってくる」にすぎないのです。

 本日の日本株の上昇は、逆に近い将来の円安を暗示しているのかも知れません。


平成22年11月19日

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