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GM再上場とJALの再建策  その1

2010年11月22日

 11月18日にGMが再上場しました。これについては各種報道がされているので、細部にわたっては書きませんが、日本のJALの再建案と対比する事によって、日本と米国の株式市場に対する考え方の違いを浮き彫りにさせてみたいと思います。やや長くなりそうなので2日にわけて書きます。

 GMは2009年6月1日に連邦破産法11条による倒産をしたのですが、事前に債権者との調整を完了させる事前調整型だったので、17カ月でスピード再上場ができたのです。特徴は、倒産時の債権者との交渉も、倒産後の再建案も、再上場をはっきりと念頭に置いたものでした。もっと分かりやすく言うと、米国政府・カナダ政府を含む全ての債権者は、割り当てられた新GMの株式だけを受取って、後は何の権利も残しておらず、全員で再上場後の新GMの業績と株価のみに期待するという、非常にすっきりとした、かつ最も効率的な再建案でした。
新GMは、とりあえず再上場を果たしました。そこでGMの再建案とJALの再建案を比べてみたいと思います。

 まず、新GMの発行株数は15億株です。これを倒産時の債権者にどう割り当てたかを見てみましょう。
 500億ドルの融資残を持つ米国政府が発行株数の60.8%、95億ドルの融資残を持つカナダ政府が11.7%を割り当てられました。つまり公的資金であるにもかかわらず、全額を普通株に換えて再上場後に回収することにしたのです。日本なら「国民の税金を使って、博打(株)を打った」と大変な非難だったでしょう。

 次に、労働組合ですが200億ドルの医療関連債権を持っており、これはかなり難航したようですが、17.5%の株を渡して、残額を放棄させました。年金はどうなったか?という疑問がでると思いますが、そもそも米国企業の年金は全くの個人責任で、会社の責任ではありません。もっとも会社が提供する運用メニューの中から旧GM株への投資を選んでいた労働者もかなりいたと思いますが、これは完全に紙屑になりました。

 約270億ドルの無担保社債を持っていた投資家には、10%の株を割り当て、残額を放棄させました。機関投資家の保有分はCDS(クレジットデフォルトスワップ)でヘッジしていたところが大半で、その配当をもらうには倒産が必要であったため、むしろ積極的に放棄案を呑んだようです。一方、年金を通じて、あるいは直接保有していたGMの労働者をはじめとする中小個人投資家の分は、ほんの少しの株を割り当てられただけで、ほとんど紙屑になりました。
 旧GMの株式も、もちろん紙屑になりました。もっとも倒産直前には株価も1ドルを割り込んでいましたし、ここ何年かはGMの時価総額は、連結される優良子会社のGMAC(金融会社)の純資産をも下回っており、そもそも自動車会社としてのGMの価値はだいぶ前からマイナスだったので、新たなショックを株式市場に与えたわけではありません。

 再上場に当たって、15億株のうちの31.9%に当たる4億7800万株が、1株=33ドルで売り出されました。最大の売り出しは米国政府分で3億5800万株です。つまり今回の売り出しは157億ドルで、米国政府は118億ドルを回収したことになります。
 また、売り出しだけではGMに資金が入らないため、合わせて優先株を発行し、全体で200億ドルを超える資金を株式市場から調達しました。中国やアラブからも引き合いはあったようですが、外人投資家のシェアはそれほど多くなかったようです。
 ちなみに、15億株の33ドルで計算すると、再上場時の時価総額が約500億ドル(約4兆円)となり、11.2兆円のトヨタ自動車の約4割の水準です。

 もう一度いいますが、GMの再建案は当初から株式市場にほとんど依存したものであり、一応、その目的を果たしました。もちろん、その一方でGMの労働者や個人株主などは冷遇されたのですが、言ってしまえば米国政府も含めて資本主義のルールにのっとった再建案により、とりあえず新GMは再スタートを切れたのです。

 それでは、わが国のJALのケースはどうでしょう。まあ、圧倒的に政府から航空行政で独占的かつ有利な地位を約束されていたJALが、なぜこのような悲惨な状態になったのかという議論はここではやめておきます。
 JALは、2009年10月14日に国の認可法人として設立されたばかりの企業再生支援機構の主導で2010年1月20日に会社更生法を申請しました。企業再生支援機構の設立目的には「有用な経営資源を有しながら、過大な債務を負っている企業を支援する」とあり、「有り余る特権を国から与えられながら、馬鹿な経営者などがダメにした企業を支援する」とは書いてないのですが、まあこれもこのへんにしておきましょう。

 最大の問題は、JALの倒産も事前調整型と言うことになっているのですが、いまだに迷走が続いており、迷走しているということは、間違いなく近い将来の国民負担が増えることになってくるのです。次回は、JALの再建案をみて、何が問題なのかを見てみましょう。決定的に違うのは、株式市場に対する考え方なのです。

続きます

平成22年11月22日

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