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GM再上場とJAL再建策  その2

2010年11月24日

 前日の続きです。

 まず11月22日にJALの更生案が債権者に可決され、東京地裁が11月30日にも更生計画を認可し、来年3月にも更生手続きが終了するとの報道が出ていました。会社更生法を申請したのが今年の1月ですので、その間何をしていたのかということと、組合がスト権を確立した場合、管財人である企業再生支援機構(つまり政府)が出資をしない可能性があるなど、さらに迷走するような気配もあります。

 ただ、JALの更生案ですが、政府(支援機構)も大口債権者である銀行団も、「政府(国民)負担をいくらまで認める」とか「銀行団の債権カットをいくらにするか」という負担の押し付け合いの議論を延々とやっていたようで、どうやって回収するかという前向きの議論が全くなされていません。その回収に一番手っ取り早いのが、株式市場を使った方法なのですが、全く考慮に入れられていません。

 それどころか、倒産時に全く株式市場に配慮を払わなかったのです。GMも普通株はゼロになったので、当然と言えば当然なのですが、JALの場合は、常に政府が後ろ盾についているので妙な安心感があり、事実株価もずっと収益に比べて高目に推移しており、倒産1年前で200円くらい、1か月前でも100円くらいしていたのです。
 当時の記事を見てみても、再建は上場維持を前提としたものである、というニュアンスが直前まで伝えられており、株主資本が100%切り捨てられるとの恐れは全く感じられませんでした。そこへ、本当の倒産直前に、全く唐突に100%減資、上場廃止と発表され、すべての株式が突然紙屑になりました。

 自己責任と言ってしまえばそれまでなのですが、これは政府(支援機構)が株式市場を全く軽視しており、更生案に株式市場を使うことが全く発想になかったからです。更生案では2012年末にも再上場とされているようですが、誰も見向きもしないでしょう。確かJALは2006年夏にも、株主総会の2日後に2000億円の公募増資を突然発表するなど、そもそも株式市場を軽視していたのです。

 最後に、企業年金の問題ですが、年金カットなんて言うので被害者意識が出るのです。そもそもJALの企業年金は、いまだに想定利回りを4.5%と世間常識から外れた数字を使っているからで、それを世間並みの1%程度にすれば良いだけのことなのです。確かに給付は減ることになるのですが、本来、出来もしない運用の成果を約束していただけなので、直せばよいのです。中小生保はみんな10年も前に、約束した利回りで運用できなくなって破綻しました。結果加入者が負担を強いられたのです。

 以上、一番大事なことはJALの再建が迷走すればするほど、最終的に国民負担が増えることなのです。政府や銀行の負担が増えることは、結局全部国民につけ回しされることになるのです。GMはみんな株式に換えて、再上場後の株価に賭けて、他の誰にも迷惑を掛けない、非常にすっきりした、かつ最も効率的な方法だったのです。
  日本では、いかに株式市場が信頼されていないのかが、改めてわかります。

 実は、JALには、米国の航空会社から出資の申し入れが複数あったのですが、政府はほとんど検討もせずに断りました。
前にも書きましたが、日本の、特に金融行政は外国人を過度に優遇することが非常に多いのです。今度詳しく書きますが、12兆円もの国民の税金できれいにした日本長期信用銀行(現新生銀行)を文字通りタダで、外国のしかも全く実績のない無名のファンドにくれてやり、しかも再上場で大儲けされたのに、1円の税金も取れなかった例など、山ほどあるのです。

 しかし,JALの件に関しては、公平に考えても、十分検討すべきであったと思います。

 現在の世界の航空会社は3つのグループに分かれています。グループ化する意義は、共同運航やコードシェアリング等でコストを抑えて、実質的に路線を増やすことができるからと、マイレージの共同利用などで顧客をグループ内に囲い込むことができるからです。

 JALはアメリカン航空や英国航空などと「ワンワールド」に所属しています。一方、全日空はユナイテッド、コンチネンタル(先月ユナイテッドと経営統合)、ルフトハンザなどと「スターアライアンス」に所属し、これが規模では最大のグループです。
 もうひとつが、デルタ(ノースウエストを合併し太平洋線では最大)、エールフランス、大韓航空などの「スカイチーム」ですが、ここに所属していたコンチネンタルが「スターアライアンス」に移ってしまったため、JALに猛アプローチをしてきたのです。グループ変更のためのシステム投資費用を全額負担するなどの好条件を出していました。

 JALの危機に際し、まずデルタ航空が「スカイチーム」への加入を条件に出資を申し入れてきました。これに対してアメリカン航空も「ワンワールド」に留まる事を条件に出資を申し入れてきました。当初の申し入れは10億ドル程度のようでしたが、考えてみればJALの持つ最大の潜在価値は、このどちらかのグループに入ることであり、うまく両社と交渉をすれば、かなりの好条件を引き出せたと思います。

 先程の長期信用銀行をタダで持っていった無名のファンド(リップルウッドことです!)は、そもそもキャピタルゲインだけが目的だったので、全く経営など出来ずに、新生銀行となってからも迷走が続いています。迷走は再度の国民負担を意味します。

 それに対し、デルタ航空にしてもアメリカン航空にしても、実際に航空会社を経営しているわけで、一度ならず経営危機も自ら経験しているので、資本も入れてもらって、経営もやってもらえば、結局、国民負担が軽減されることになるはずでした。

 繰り返しますが、私は、特に金融行政において外国人を不思議に優遇することに対しては、非常に批判的です。先ほどの日本長期信用銀行(現新生銀行)の、「とんでもない話」は、今度書きます。
ところが、外国人を引き込んだ方が良い結果となる場合も、わかっているつもりです。今となればもう遅いのですが、JALについていえば、政府(支援機構)と銀行団の負担の押し付けあいのような議論ではなく、思い切って外国資本にある程度まかせた方が、国民経済のために良かったのではないかと思います。

 1999年にルノーが、瀕死の日産自動車に8000億円の資本注入をして傘下に入れました。その後は莫大な配当を得ているとか、逆にルノーに15%の出資をしたのに議決権を与えられていない、とか確かに問題点も幾つかあるのですが、日本政府主導で日本人の経営者がやっていれば、やはり悲惨な状態は続いていたであろうと思います。要は、早く収益を生み出して、株式価値を増大する体制を考えればよいのですが、JALの場合は、全然見当違いの議論を延々とやっているようにしか見えません。

平成22年11月24日

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