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野村証券の劣後債と銀行の劣後債

2011年12月21日

野村証券の劣後債と銀行の劣後債

 本日は昨日から始めた「2012年はどうなる」シリーズの第2回を書くつもりだったのですが、昨日(12月20日付け)の「野村証券が銀行傘下に」について、野村証券の劣後債に付けられている「条件付き債務免除特約」はバーゼル3準拠型にするために付けたにすぎず、本誌の指摘は見当違いであるとのコメントを頂きました。

 非常に重要なことですので、本日は「2012年はどうなる」シリーズを早速中断して、これについて書いてみます。

 昨日の記事を書くにあたって、当然に同時期に発行されているメガバンクの劣後債の発行条件、顧客向け営業資料、発行登録追補目論見書などはチェックしており、決して「きちんと調べないで」書いたわけではありません。

 詳細は後で繰り返しますが、3大メガバンクすべてがここ半年以内(つまりバーゼル銀行監督委員会が、先般の世界金融危機から得られた教訓に対応するための包括的な対応「バーゼル3」が示された後)に公募劣後債を発行していますが、すべて典型的な劣後事由(日本の裁判所による破産・会社更生・民事再生の手続き開始、または日本以外の法域におけるこれらに相当する手続き開始)が明記されているだけで、件(くだん)の「条件付き債務免除特約」に類するものは一切見当たりません。

 野村証券に付けられている「条件付き債務免除特約」とは、野村証券が「本社債の債務免除を受けないと」あるいは「公的資金を受け入れないと」存続が不可能になると金融庁(ここが重要です!)が判断した場合にデフォルト(元利金が支払われなくなる)となることです。つまり野村証券が倒産しなくてもデフォルトしてしまうのです。

 バーゼル銀行監督委員会による「実質破綻」の定義が曖昧なために付けたまでというご指摘に対しましても、当然メガバンクも野村証券も劣後債発行に際して提出書類・発表書類などはすべて金融庁(財務局)のチェックを受けており、その内容についてはすべて金融庁の「意向」が反映されていないと認められないもので、何故、野村証券の劣後債だけが「わざわざ強調」させられているのかが重要なのです。

 並列に論じるべきでことではないかも知れませんが、近年上場企業(特に業績不振企業)の資金調達(特に株式発行)については金融庁(財務局)や取引所のチェックが非常に厳しく、あらゆる情報やリスクの開示が求められ、それらを反映した条件設定にしないと絶対に認められないものなのです。

 これは、もちろん「当局の責任回避」の動きなのですが、野村証券の劣後債についても「将来発生しうるリスク」すべてを反映した、さらに言うと「将来に当局に責任が及ばない」条件設定にすることが求められ、その結果、付けられた「債務免除特約」なのです。

 まあご指摘の内容は、野村証券が営業店に対して「指導」されている説明なのでしょうが、本誌の指摘は決して「見当はずれ」ではないと確信しています。

 でも、貴重なご指摘ありがとうございました。よろしかったら引き続きコメントを頂きたいと思います。

 劣後債の話になったついでに、最近発行されたメガバンクの劣後債についても書いておきます。

 三菱UFJが本年7月に発行した個人向けの1600億円の劣後債は、10年償還ですが5年目に途中償還条項がついており、利率が1.11%です。

 三井住友が本年11月に発行した同じく個人向けの1500億円の劣後債は、同じ10年償還で5年目に途中償還条項がついており、利率が1.08%です。

 劣後債は償還期限まで5年を切ると、自己資本に算入できる額が減少するために10年償還で発行しておき5年目に途中償還条項を付けるものなのです。

 まあ、これらの利率が「十分か」と聞かれれば、リスクから考えて「非常に不十分」なのですが、そもそも銀行の5年物預金金利は0.08%以下なので(確かに1000万円までは補償されるのですが)、こちらの方が「驚異的に不十分」なのです。

 一応、同じような条件の海外で発行されている劣後債の流通利回りを見ておきますと、三井住友のドル建て劣後債で2015年10月に途中償還条項が付いたもの(実質4年弱)が3.75%程度です。

 詳しい説明を省きますが、これは円建てに換算しますと3%程度となります。つまり海外で主に機関投資家向けに発行されている劣後債に比べて国内で個人向けに発行されている劣後債は、利回りで2%も低く設定されているのです。
 
 まあ2009年前半の金融危機直後に、みずほ銀行が海外(ドル建て)で14.95%もの利率の優先証券(確かに期限付き劣後債よりかなり格付けが落ちるのですが)を発行しておきながら、国内では知らん顔して2%台で劣後債を大量に発行していたように、銀行の「資本政策」についてはいろいろ「とんでもない話」が多いのですが、もし時間がありましたら昨年10月17日付け「エクイティファイナンスの裏側・・儲けたのは誰だ?」だけでも読んでみて下さい。

 さて、明日は「2012年はどうなる」シリーズを続けます。多分「米国について」です。そのあと「ユーロについて」や「中国(北朝鮮を含む)について」などと続く予定です。

 また、本日オリンパスの増資についての報道が出ています。前述のように増資についてはすべて「当局の意向」を反映したものでなければ報道されるはずがなく、当然「上場維持」が既定の事実となっているのです。

 まあ、日本長期信用銀行みたいに「外資」に騙し取られるより、「オール日本」で「最終処理」する方がいいですね。

 それから、オリンパスには今週中に「予定通り」強制捜査が入るようです。ここでも警視庁が前面に出るのか東京地検特捜部が出てくるかによって少し意味が違うのですが、今となればもうどうでもよいことです。

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コメント
おっしゃる通りです。
阪中氏の見識の高さに恐れ入ります。

筆者の名前を書いたらいけないでしょ
てか筆者も何でコメント承認しているんですか
>近年上場企業(特に業績不振企業)の資金調達(特に株式発行)については金融庁(財務局)や取引所のチェックが非常に厳しく


新株発行等のことだけではなく、株式併合
等のことも取引所で規制を受けます。それは、企業規範規則からきています<上場企業には、会社法以外の規定が存在します>。

3587<アイビーダイワ>は、JQの2円ルール<今は、10円ルールに>から株式併合を考えていましたが、IR執行役員・井上氏は、JQから上場維持目的の株式併合は許可しないと言われたと、アイビーへ架電した時に、本人から聞き取りました。

最終的には、アイビーは株式併合<10→1>と売買単位変更<1000株→100株>となりましたが、23.1.20日IRには、エクイティファイアンス発行・資本増加と業績が結びついていなく、ただ、発行済株式数を増加させたとして、過去のエクイティファイナンス発行に対して懺悔をさせられています。

また、安易なエクイティファイナンス発行に取引所は、釘をさっしています。

ですから、そのIRには、過去のエクイティファイナンスが業績結果に繋がらなかった状況を踏まえ、営業キャッシュフロー及び営業キャッシュフローを裏付けとした借入枠を超えた投資<天然資源への開発を言っているのかと>を必要とする事業への新規投資は、当面は行わない。新本政策に繋がりうるような大規模な投資を行わなければ収益を生まない資産は原則として売却し、エクイティファイナンスを行わずに事業の再編を行う。とこのようなことを、JQから懺悔として書かされたのかと思います。

事実、アイビー<プリンシバル>は、その後、エクイティファイナンス発行はしていません。

また、ジャルコHDとなる前、ジャルコはMSCB発行の発表<21.3月>をしましたが、取引所からの忠告を無視してましたが、数日後に発表したMSCB発行訂正IRでは、取引所から指摘を受けた企業規範規則に違反していましたと懺悔をさせられ、MSCB転換下限価額1円から4円に訂正しています。

取引所は、企業規範規則を設けて会社法だけでは対処できない規制強化をしていますが、イタチゴッコかと!ただ、上場維持目的にエクイティファイナンス発行してきた企業には、ボディブローとして効果がでてきています。

それは、MSCB及びMSワラント発行の暦月で転換及び行使可能株数の規制、300%以上の希釈率となる株式発行は上場廃止規定に抵触する規定、また、発行済株式数の25%以上となる第三者割当新株発行、新株予約権発行等は、株主総会決議規定、或いは第三者委員会の承認を得る規定により効果はでてきてはいます。

企業規範規則で、発行済株式数の25%以上となる第三者割当の新株発行だと、株主総会決議等が必要でしたから、その回避をするために、セイクレストは、株主1株に対して2株の新株割りい当てを実施。

これなら、第三者割当じゃありませんから、希釈率25%以上の規定は問題にはなりませんし、自社株がありますから、300%以上希釈率にも抵触はしません。
オリンパス、年内は何もないのではなかったのですかな。一斉捜査が入ったみたいですが
では追加コメントさせて頂きます。

管理人の方は私のIPがお分かりになるでしょうから、明らかに野村関係者では無いこともご存知の筈です。

件の文言はBCBSの2011年1月のプレスリリースの文言のコピーに過ぎません。また、ICBCの人民元建Tier2債にも同様の文言が見受けられます。

実質破綻状態における債務免除特約を付し、バーゼル3準拠とした劣後債の発行はまだ少ないのですが、野村自ら率先して発行することで他の発行体に対するマーケティング効果が期待出来るということは、他社から見ても理解できます。

邦銀においては預金保険法102条をベースに実質破綻状態を定義することが議論されており、預金保険法の対象とならない野村とは事情が異なります。

何れ議論が落着すれば、バーゼル3準拠にする為、邦銀においても、実質破綻状態における債務免除特約(上記の事情から文言は野村と異なる筈)を付した劣後債が発行されるはずです。

以上、私の理解です。
マーケティングといっても、どのメガバンクにおいても、傘下にそれぞれ証券会社を有しており、国内ではりそな銀行位しか大きなディールは無さそうですけどね。

COCOsに代表されるように、欧州では当局の資金(国民の税金)投入に先立って、投資家が損失を被るような証券が発行され始めていますが、トリガーの水準などが議論中で、その取り扱いさえ未だ決まっていません。当然、発行自体も一部の金融機関のみで、広がっていません。また、欧米の金融機関は、足元のクレジットリスクの拡大により、そのほとんどが発行さえ難しくなっています。

こうした中、件の特約は、クレジットイベントが近づきつつあると考えられる野村の発行する劣後債においては「税金投入前に損失を負わせる」ように、何らかの圧力が働いたと私は考えます。これが正しければ、野村が破綻する可能性は少なくなったとも言えますかね・・(いざと言う時には、当局の介入があるという意味で)。

以上、結論が出ない話でした。
メガバンクの劣後債に実質破綻条項がついていないのは、劣後債で中核自己資本を満足させる必要がとりあえず無いからでしょう。
ご承知の通りバーゼルⅢ規制では、実質破綻条項の無い劣後債は中核自己資本と認められません。
メガバンクは新BIS規制でも自己資本比率規制に余裕があり、野村には余裕がなかったため付ける必要があったわけです。

またメガバンクなど銀行は預金保険法による公的資金注入(国有化)が定められており、バーゼルⅢ規制との整合性を取る必要があるため来年中旬くらいまでは実質破綻条項付きの劣後債が発行できる見込みもありません。

証券会社には実質破綻による公的資金注入の法的スキームが無いため、実質破綻認定によって公的資金を注入する現在のところ不可能です。
裏で金融庁が野村證券に破綻に備えて銀行免許を取得しろと圧力をかけたという噂もありますが・・・

いずれにしろバーゼルⅢ規制の実質破綻条項の問題は銀行の劣後債発行と絡めて、来年以降の預金保険法改正によりはっきりしてくるのではないでしょうか?

公的資金注入には金融機能強化法によるものもありますが、こちらは実質破綻ではないためバーゼルⅢ規制の対象外だそうです。
預金保険法改正
やっとバーゼルⅢ対応で預金保険法改正がされました。
私の予想では去年のうちにされるだろうと考えていたのですが、遅ればせながら野村劣後債の実質破綻条項が法律面で整備されたこととなります。

今回の預金法改正で重要なのが生保と証券にも、預金保険法102条に基づいて公的資金を注入できるようになったことですが、バーゼルⅢで言う実質破綻と金融庁が認定するのは第二号措置と第三号措置となります。

元本削減がなければ発行者が存続できないと認められる場合 -金融庁
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20121212-1/11.pdf

つまり預金保険機構が野村證券に預金保険法にもとづいてペイオフコストを越える資金援助(第二号措置)、および特別危機管理(第三号措置)を決定すると野村劣後債がデフォルトするということになります。

ちなみに各銀行では未だにバーゼルⅢ対応の劣後債は発行されていません。
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