闇株新聞 the book


闇株新聞 the book
発売中です。
よろしくお願いします。

円高のメリット・デメリット  その1

2012年01月06日

円高のメリット・デメリット  その1

 先日「無策の円高が続く」と書いたのですが、読者の方から「そんなに円高は悪いことなのか?」とのコメントを頂きました。非常に重要なことなので本日はこれについてです。

 細かく考えていくとキリがないので、総論的なことと各論的なことの1点ずつに絞って書きますが、それでも2回分になってしまいます。

 まず総論的なことからですが、日本銀行の発表している本邦対外資産負債残高(2010年末・これが最新なのです)によりますと、日本全体から見た対外資産残高が563兆円(直接投資68兆円、証券投資272兆円、その他投資130兆円、外貨準備90兆円など)に対し、対外負債残高が312兆円(直接投資18兆円、証券投資152兆円、その他投資136兆円など)で、差し引きの対外純資産が251兆円となっています。

 ただ対外負債残高と言っても、外人投資家が「勝手に」日本に直接投資・証券投資・その他(大半が不動産)投資をしている分がほとんどで、為替や価格がどうなっても日本にとっては何の関係もありません。

 つまり日本全体でみれば純資産の251兆円ではなく、資産残高の563兆円が海外エクスポージャーなのです。

 厳密に言えば、本邦企業が対外資産を持つときに現地で資金調達しているケースとか、国内でも何らかの為替ヘッジをしているケースなどがあるため、563兆円のうちのどれくらいが為替エクスポージャーとなっているのかを推測することは難しいのですが、何れにしても「円高」によって巨額損失(評価損)が発生していることは確かです。

 逆に、本邦企業などが全く単純に外貨建ての資金調達をしていれば、間違いなく「円高」のメリットを受けているのですが非常に少ないと思われます。

 米国を見ているとよく分かるのですが、一番即効性のある景気対策は株式市場を上昇させることによる資産効果で、そうすると市場心理が好転して経済活動が活発化して行くのです。だから米国の経済対策とは株式対策と言ってよいのです。

 逆に日本では、規制強化(罰則強化)ばかりで株式市場が低迷し、「円高」により巨額の評価損が発生しているため、両方の「逆資産効果」による景気の低迷が続いているのです。

 極論すれば、まず「円安」になりさえすれば、それによって(多分)株式市場も上昇するため、両方の資産効果でまず市場心理が好転して、それを受けて実体経済も改善するという順番のはずなのです。

 つまり「円安」が最も即効性のある景気対策であることは間違いないのです。

 今からでは明らかに手遅れなのですが、過去に日本国債を外貨建てで発行しておけば、かなりの「償還差益」が生まれて財政状況の改善に寄与していたはずです。
 手遅れという意味は、今更(例えば)ドル建ての日本国債を発行しても世界中でドル資産を圧縮しているなかで販売できず、また日本の国力からしてこの「超円高」が長く続くとも思えず将来「償還差損」が発生する可能性が高いからです。

 本誌の主張である「日本国債(円建て)」を海外に売ろうというと「本当に売れるのか?」となるのですが、世界で一番買い手が多いはずの「円」と「国債」に分解して考えれば「絶対に売れる」のです。
ただ円建てなので将来円安になっても「償還差益」が出ないため、海外で保有されている国債残高の半分の外貨を持とうという、もう1つの本誌の主張になるのですが、昨年11月1日付け「円高に対する国家戦略とは  その1」、11月2日付け「円高に対する国家戦略とは  その2」に詳しく書いてあります。

 これからの議論にも関連していますので、ぜひ時間のある時に読んでみて下さい。

 さて次は各論的なことで、為替介入などを行う「外国為替資金特別会計」(以下、「外為特会」)について考えてみます。
外為特会では為替介入だけでなく、欧州のEFSF債(ユーロ建て)や、野田首相が先日「パンダの見返り」で約束してきた中国国債の購入なども行います。原資はすべて国債(政府短期証券)の発行で賄っています。

 政府短期証券と言っても、ずっと借り換えを続けているため長期国債と変わらず立派な国民負担です。従ってそれを原資にする「外為特会」は、その運営方法は国民に対して責任を負うものであり、またその収益(出ればですが)は国民に還元されるべきものなのですが、現状は全く違っています。

 平成23年11月末現在の外貨準備高(外為特会の残高)は1兆3047億ドルとなっています。一方、負債である政府短期証券の発行残高は137.9兆円と推定されます。

 発表されている最新の平成23年9月末現在の政府短期証券発行残高が128.8兆円で、そのほとんど全部が外為特会向けのはずで、さらに平成23年10月~11月に行った9兆916億円の為替介入資金も政府短期証券発行で賄っていると推定した数字です。

 つまり、単純に計算して(もちろん全額がドルではないのですが、円でもないのでドル換算してという意味で)105.70円が「わが外為特会」の保有するドルのコストなのです。

続きます。

闇株にご賛同頂けれる方は下のバナーをクリックをして頂けると助かります。


Ads by Google

コメントをする⇒
| Comment:8 | TrackBack:0
関連記事
コメント
ままさか早速お応えいただけるとは思いませんでした。ありがとうございます。
対外資産残高という観点は大変勉強になりました。
まだ続編があるとのことですが、総論の部分で、もう少しだけ詳しく私の考えを記述させて頂きます。

まず、対外資産残高はストックの指標でありますが、そのストックの面からみて円高によって、「逆資産効果」が生まれているとのことは理解ができました。ただそれは本当に景気に影響を及ぼすほどのものなのでしょうか?
日銀が発表している資金循環統計の金融資産・負債残高表をみていただければ分かりますが個人・法人(金融及び非金融)で対外証券投資の総資産に占める割合は決して高いとはいえません。
ここからみて、為替変動で個人・法人が「全体」として企業活動や自己の資産に致命傷になるような割合で海外資産にエクスポージャーしているとは思えません。
また、フロー指標の所得収支は極めて安定的に黒字であります。もちろん円高によりその額は縮小しておりますが、逆に直近の貿易統計をみると貿易赤字は円高の恩恵を受け赤字幅を縮小させています。
要はストックの面からもフローの面からも円高はそれほど大したことではないということが私の本旨です。
さらに、先に申し上げた通り、日本は海外に大したエクスポージャーをしていないわけで、特に個人にとってはこんな円高という圧倒的な大チャンスはないわけです。
そのような中で、日銀に本来の目的である金融システムの安定」と「物価の安定」というを忘れてまで、現在ここにある圧倒的な大チャンスを潰しかねない円安政策を、慌ててとってもらう必要はないのではないか?ということを言いたかったのです。
但し、優秀な日銀及び日本の金融システムに比べ、本当に無策無能の政府には辟易しているのは私も同様ですが…

先ほどの投稿ですが、かなり説明が不十分のところもございますので、もしお時間があれば溜池通信VOL477というのをお読み頂けたらと思います。
もちろん私が書いたものではありませんし、どこかの回し者ということでもありませんので。。。
>但し、優秀な日銀及び日本の金融システムに比べ

日銀法改正以降、海外で評価されたのは福井俊彦だけ。もっと前だと森永貞一郎とかいるが。何言っているんだか。
初めて書き込みます。
いつも斬新な切り口大変興味深く読ませていただいています。

何点かViewをお伺いしたいと思い書き込んでみました。
1.
円建て国債を海外で販売というのは今後の国内勢の引き受け能力の逓減を考えると有効のように思えますが、同時に国債の外国人保有比率を上げていくことになります。(ここ最近比率はあがっていますが、これは中国勢による短期証券へのFTQだと思いますのであくまで一過性のものととらえています。)この比率が上がればあがるほどマーケットが売りに回ったときの売り玉が増えるわけで危機時のDownsideへのボラティリティを増やすことになりかねないのかなと。。外人が売り崩しにかかった際にいままで失敗しているのは彼らが現物を持たず先物のShortのみで崩しにかかっていたからだと思います。国内勢には国債を保有し続けるインセンティブと使命感もあり、この先物の売りに現物債が100%ついていかなかった。これが堰になっているのだと思います。外国人保有比率が上がると国債保有のインセンティブもロイヤリティもない人達の投売りを止める堰が脆くなるのではないかと心配しています。

2.
外為特会の平均コストはざっくり105.70円くらいとありますが、これはSwapポイントや日米金利差収入を含んだものでしょうか。。?

もしよければお考えをお聞かせください。
楽しみにしています。
確かに優秀は言い過ぎたかと思いますので訂正いたします。私も日銀を褒め称えるつもりはありませんでしたので。。。
ただ、政府が無能な上、日銀が本当に無能な中央銀行であるなら、日本の金融システムはとっくに崩壊しており、逃避とはいえ今のように円が買われるはずがないという意味での記述ですのであしからず。
また、「海外に日銀総裁が評価されること」=「日銀が優秀」ということではないと思いますし、まったく日銀が評価されていないのならば今の円高は存在しえず、海外からの一定の評価があってこそのものだと思います。
日銀が優秀とかの論点は意味ない
欧米が緩和と緩やかなインフレコントロールに依って危機を脱しようとしてるのだから、円高は当たり前。
日銀が優秀だからとか、日本が信任されてるから円が強いとかの論点は非常に違和感を感じます。
通貨安とインフレ率がそれぞれ年3%弱位で推移すれば10年経たない内に実質負債は半分以下になります。
欧米は明らかにそういう実験的とも言える政策です。
そうでもしないと助からない程、抱えた負債は大きい訳です。
一方日本は増税に依って過去の負債を減らそうとしているので、このままの状態だと円高はもっともっと進みます。
良くマスコミは円高は投機的動きと言いますし、閣僚官僚も行き過ぎだ円高はファンダメンタルズに基ずいていないと発言してますが、明らかに国民向けです。金融当局者はこの円高は通貨供給と完全に一致していると思っているはずです。
通過安を伴う欧米の金融政策には対象が必要で、その一つが明らかに日本な訳です。日本の通貨高維持には相当米国からの圧力があります。今の為替政策の中で日本は生贄みたいなものですが、逆らえ無いのも事実です。その中でどう円高をメリットとして行くかしか国としての方向が無いということでしょう。
方や日本は増税に依って過去の
いつも興味深く拝読させて頂いております。
先日の野村ホールディングスの劣後債の要件もそうなのですが債券市場に関するご認識にやや違和感がありますのでコメントさせていただきます。
日本国債(円建)を発行して海外に売ろう というご意見ですが、既存の日本国債が既に非居住者も十分購入可能な仕組みになっています。以前は、源泉徴収税等の問題で日本国債を購入したくとも買えず、そうはいいつつ円建アセットを持つ必要性から「日本国債代替」としてほかの高格付発行体によるユーロ円債またはグローバル円債(両者とも、平たくいえば海外市場での円建債券発行行為です)を購入する外国人はある程度の規模存在しましたが、現在は市場・税制面の整備も進んでおり日本国債を非居住者が購入する上での障害はほとんどありません。そのため円建債券に対する海外投資家のニーズは、通常の日本国債そのものの発行・流通で十分すぎるほど吸収されています。
また、ドル建の日本国債を発行していれば大幅な償還差益が というお話ですが、それは政府がドル建債を発行し、その資金をドルで持ち続ければという話です。実際は、調達した資金を円に転換する必要がでてくるわけですが、発行時に通貨スワップを行うのであればその時点でドルと円のスタートとエンドの元本交換が確定しますので償還差益はネットでは発生しません。また仮にドル資金のまま持つというのであれば仰られる通り償還差益は発生しますが、言ってみれば巨額のドル安投機を政府自ら行うと市場全体が解釈、現時点では想像もつかないくらいの円高になっていると想定されます。

ついつい厳し目な意見になってしまいましたが、当サイトでのご意見は筋の通っているものも多く、いつも参考にさせて頂いております。これからも宜しくお願い致します。
最近闇株を知りました。
株式投資の参考とさせていただいております。
ところで日本政府所有の米国国債の扱いについてですが、保有しているだけではつまりませんので、何とか流動できないものか?
かと言って、一般市場に売り出すことは禁じ手との自己規制に縛られているわけです。
そこで幼稚なアイデアなのかもしれませんが、日本国民への限定版で小売りすればどうでしょうか。
すぐ売られては困りますので、3年後償還とかにすればいいでしょう。
ポイントは、
1.一般国民は若干でも高い金利の米国国債に関心があるものの、直接米国国債を購入するのは敷居が高いので、10万円ほどの資金で郵便局で購入できる形が望ましい。
いっそのこと、郵便貯金の口座引き落とし方式でもいいのでは?
あるいは、毎月一定額を米国国債購入資金として引き落とす方式も面白いのでは?
2.一般に投資家は僅かな金利差を追求するわけだから、米国国債を購入し償還する際には通常為替コストが往復で掛かることになるが、この取引に関しては為替コスト不要ということにすれば人気が出ることでしょう。
とにかく日本の豊富な個人金融資産を流動化させることで、現在政府が保有する米国国債を国民に代替させ、それで得た円資金を復興財源等に使用する案はいかがでしょう。
コメントの投稿
闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム
Ads by google
Ads by Google
最新記事
最新コメント
全記事表示リンク
フェイスブック
カテゴリ
カレンダー
プルダウン 降順 昇順 年別

07月 | 2017年08月 | 09月
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -


ブログ内検索
Loading
お問い合わせ

※ページが見れない・表示されないという方はお手数ですが、原因究明のためお使いのOSとブラウザを記述の上お問い合わせ頂けますようお願い致します。

名前:
メール:
件名:
本文:

闇株新聞プレミアム

各種メディアに掲載されている闇株新聞の裏・・・

闇株新聞プレミアム