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ユーロ急落の本当の理由(号外版)

2012年01月08日

ユーロ急落の本当の理由(号外版)

 3連休なのですが、週末のユーロの急落についてぜひコメントしておきたいので、予定外の記事となりました。
昨日(1月7日)のメルマガを加筆しました。メルマガで書いた内容は本誌では繰り返さないようにしているのですが、今回だけはご了承ください。

 さて年末に100円を割り込んだユーロは、週末(1月6日)のNY終値で1ユーロ=1.2717ドル、対円で97.88円まで下落しました。
 日本でも「ユーロは破綻」(某大臣、もうすぐ大臣ではなくなりますが)などと騒がれているのですが、重要なポイントが2つ抜けています。

 まず1つめは、ユーロは発足以来、非常に大きな価格変動を繰り返しており、最近の動きが特に急変(急落)というわけではないことです。

 ユーロは、発足した1999年1月1日の初値が1ユーロ=1.1792ドル、対円で132円でした。しかし何故かそれから下落を続け、2000年10月26日には1ユーロ=0.8252ドル、対円で89円割れになってしまいました。

ユーロ発足前は、各構成国は自国通貨を基準値の上下2.25%に維持するERMに縛られており、それなりに財政収支や経常収支を悪化させないために国内金利を比較的高めに維持するなどの「引き締め気味」の政策運営を強いられていました。
それが統一通貨・ユーロになった瞬間に「たが」が緩んでしまったのがユーロ下落の原因だと言われています。

 しかし逆にその後は、「たが」が緩んだことによる景気拡大や、特に南欧諸国の受けた低金利の恩恵や、米国経済がITバブル崩壊や同時多発テロ(2001年9月)で急減速したことによりユーロは長期にわたって上昇を続け、2008年7月15日に1ユーロ=1.6038ドル、対円で170円直前と最安値からほぼ倍になりました。

しかしその直後の世界金融危機でユーロは急落し、僅か3ヶ月後の2008年10月には、1ユーロ=1.24ドル割れ、対円でも112円となってしまいました。
この間の下落幅が資源国通貨である豪ドルに並ぶもので、世界中から実需の他に巨額の投機資金が流入していたことが分かります。

その後は現在に至るまでの約3年間、概ね1ユーロ=1.2~1.5ドル、対円で100~140円のレンジが続き、比較的「安定期」でした。
その間、2010年5月に最初の財政危機であるギリシャ問題が発生した時も、瞬間的に1ユーロ=1.2ドル割れとなったものの(対円では105円)すぐにレンジ内に戻りました。

つまりユーロは発足後わずか12年の間に大きな変動を繰り返しており、ここ3年間の「比較的安定期」に目が慣れていただけなのです。某大臣の言うように「破綻」しそうなら、こんな変動幅ではないはずです。

重要な点の2つめは(こちらの方がはるかに重要なのですが)、今回のユーロ下落の直接の原因は、昨年12月8日の金融緩和でECBが「量的緩和」に踏み切ったからなのです。

確かにFRBや日本銀行と違い、ECBは「量的緩和」したとは決して言っていません。また当然「量的目標」も示していません。

しかし、12月21日にECBは4892億ユーロもの3年間の資金を域内の銀行に供給し、それを受けてECBのバランスシートが2兆7300億ユーロに急増した(3ヶ月前は2兆1800億ユーロでした)ことが発表されてからユーロが下落し始めたのです。

 同時にECBは資金供給に際して域内の銀行から受け取る担保条件を緩和し、A格まで認めるようにしました。これも明らかに「量的緩和」をやり易くするための措置です。

米国が2010年11月に行った量的緩和(QE2)は、FRBが6000億ドルの国債を6カ月にわたって買い入れることだったのですが、それとほぼ同金額を1日で供給してしまったのです。しかも「量的目標」を示していないので状況によってはもっと巨額に供給する事も考えられます。
FRBが銀行から国債を買い入れることと、ECBが単に銀行に資金を貸し付けることは違うと考えられるかもしれませんが、今回のECBの資金供給は異例の3年間であり、見合う担保を受け入れているため、何ら違いがないのです。

どこにも「そういう説明」がされていないのですが、ユーロは「債務問題が深刻化してユーロ安になった」のではなく、「ECBが米国並かそれ以上の(ここが重要です)量的緩和に踏み切ったのでユーロ安になった」のです。

資金供給はもちろんユーロ域内銀行の資金繰りを助けるためなのですが、ユーロ当局者の間に「ユーロを(意識的に)安くする」という意図も絶対にあるはずです。八方ふさがりのユーロ経済のために「ユーロ安」は一番安上がりの「経済対策」だからです。

つまり「ユーロ当局がユーロ安政策に転換」したのです。言い換えると「ユーロは下がったのではなく、当局が下げ始めた」のです。あくまでも「下げ始めた」ばかりなのです。

これによって一番恩恵を受けるのがドイツ経済です。DAXが昨年10月の安値から2割以上も上昇しているのはこれを先取りしているのです。

そうなると、米国も(ユーロ安に対抗すると言う意味だけで)追加金融緩和に踏み切るかもしれません。

世界中で通貨引き下げ競争の第2弾が始まったのです。

 安住財務大臣は「市場が、ユーロ圏各国政府の努力(財政問題の解決を指していると思われます)を催促していると思われ、注意深く監視していく」と発言しており、明らかに「日本も財政再建(増税)をしなければならない」という官僚の意向に「すり替え」られて「利用」されているのです。

 だから「ユーロ当局は、財政問題解決のために量的緩和をして(ユーロ安にして)景気の後押しをすることにした」という重要なメッセージが全く見落とされているのです。

 本誌では、昨年9月15日付け「劇的に劣化する通貨・ユーロ」で、半年以内(つまり本年3月まで)に1ユーロ=1.10~1.15ユーロ、対円で85~90円と予想していますが、変更の必要は無いようです。

 次回は1月10日(午前零時)で、「円高のメリット・デメリット」の続きです。貴重なコメントを多数頂いており、出来るだけ反映させて書こうと思いますので1回で終わらないかもしれません。

平成23年1月8日

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コメント
目的がユーロ安…QE2と同じような政策だとは思いますが、ユーロ崩壊の危機にある中でそんな目的に余裕のある政策にはとても見えませんが…
日本同様無能な政府のおかげでユーロ崩壊どころか金融危機がほんとに近いんでしょう。
その想定シナリオをもとに米国をはじめ各国が危機対応を既に準備しているとFTに取り上げられていたようですね。
ただ幸いにも日本は円高であり、その円の資産効果を最大限活用できるチャンスが近づいているようですね。
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