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ドラギECB総裁のジレンマ

2012年02月29日

ドラギECB総裁のジレンマ

 昨年11月に就任したマリオ・ドラギECB総裁は、近年の世界主要国の中央銀行総裁の中でも出色だと思います。

 中央銀行総裁の資質とは「中央銀行の権限の範囲を超えることなく」「明瞭な政策を」「手遅れになることなく」「思い切って行い」かつ「市場との対話が出来る」ことです。見ている限り今のところすべて合格点です(書きませんので日銀総裁と比べてみて下さい)。

 そのドラギ総裁が就任直後に打ち出したのは、政策金利の引き下げ(2回にわたって1.5%から1.0%へ)、預金準備率の引き下げ(2%から1%へ)とならんで長期資金供給オペ(Long Term Refinance Operation、以下LTRO)があります。

 昨年12月21日に域内の銀行へ合計4892億ユーロ(50兆円)を政策金利(つまり1%)で3年間にわたって貸し出しました。従来は13ヶ月が上限であった期限を3年まで伸ばし、担保条件を緩和し(各国の中央銀行が認める条件の貸出債権やA格までの資産担保債券まで担保として認めた)、主にイタリアとスペインの銀行を中心に出された「希望額すべて」に応じたのです。

 米国(あるいは日本)の量的緩和が目標値を決めるのと違い、域内の銀行の「希望額すべて」の資金が供給されるのです。前回の貸し出し直後はクリスマス休暇前ということもあってECB内に「積まれていただけ」の資金が、年初からまず短期市場に流れてユーロ金利とドル金利が下がり、次いでユーロ圏各国の国債利回りも低下し、明らかに金融市場が落ち着きを取り戻したのです。

 その影響は米国市場へも波及して米国株式が上昇して米国経済の見通しが改善し、先日の日本銀行の「申し訳程度」の追加量的緩和でも「かなり円安と株高」が進みました。

 どう考えてもドラギ総裁のLTROが、ユーロ圏だけでなく世界経済を明るくしたのです。そしてこれは中央銀行の「権限の範囲内の」「金融市場を落ち着かせるための明確なメッセージが伝わる」「極めて思い切った」政策だったのです。

 同時に、ECBは財政問題を抱えて利回りが急上昇している国債を買い入れてECBの資産を毀損させる危険を冒すことなく、見事に国債利回りも低下させ、もちろん株式市場も上昇させたのです。

 そして本日(2月29日)、第2弾のLTROが予定されています。

 もちろん担保は必要ですが、域内の銀行には「希望額すべて」の資金が供給されるため、その総額が3000億ユーロとも1兆ユーロともいわれており、全く予想できません。

 あくまでも個人的推測ですが、昨年来のドラギ総裁の「予定」の中に「ユーロ安」があったはずです。為替政策は中央銀行の権限ではないのですが、ECBが実質「無制限の」量的緩和を行うことによって引き起こされる「ユーロ安」は、財政政策を封印されたユーロ圏経済にとって数少ない効果的な「援軍」なのです。

 事実、昨年末のLTROを受けて本年1月16日に1ユーロ=1.261ドル、対円でも97.04円の安値を付けたのですがそこから反発し、2月28日現在1ユーロ=1.34ドル台、対円では日本銀行の追加量的金融緩和があったこともあり108円台と「急反発」しているのです。

 これはユーロ圏の金融市場が「期待以上に」落ち着きを取り戻した結果、ユーロが「予想以上に」上昇しているわけで、これだけはドラギ総裁の「想定外」のはずなのです。

 つまり、あまりにもドラギ・マジックの効き目が絶大だったため、ユーロ圏だけでなく世界中がドラギ総裁の手腕に期待し、結果投機筋のユーロ売りも、実需筋のユーロ保有比率の引き下げも止まってしまったのです。

 過去、この域に達していたのはRFBのボルカー議長くらいです。

 本誌は、昨年9月15日付け「劇的に劣化する通貨ユーロ」ではユーロの構造的欠陥で、また本年1月8日付け「ユーロ急落の本当の理由」では今回の思い切った量的緩和で、ユーロはさらに下落し本年3月(もうすぐです)までに1ユーロ=1.10~1.15ドル、対円で85~90円と予想しました。

 もちろん「大外れ」なのですが、決して言い訳をするのではなく外れた理由の中に「ドラギ総裁へ世界中の信認が集まり、その結果ユーロ経済や通貨ユーロへの評価が改善した」ことがあると思うのです。

とりあえずLTRO第2弾の結果と、それを受けた為替市場の動きをよく見て、また懲りずにドルとユーロの長期予想をしてみようと思います。

平成24年2月29日


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コメント
質問させてください。
今度の金融緩和はユーロ安に結びつかないと言うことなのでしょうか?
1/8の記事とかなり矛盾しているような気がするのですが如何でしょうか?
闇株さんへ質問です。

そもそも、何でギリシャをユーロに入れたかというと、ドイツ・フランスの米国への対抗心、およびドイツが周囲の警戒を弱めるため。

留めているのは、これに加えて激変回避、およびユーロ安望みという理解でOKでしょうか?
闇株先生のご意見を聞きながら日々のニュースを眺めており、以前よりいろいろ理解できるようになりました。
確かに資本主義の世の中では資金供給による還流の活発化が必要不可欠ですが、株価上昇を尻目に原油価格、金価格が上昇しています。
政策が投資家ばかりを意識して、実態経済からどんどん離れていってしまってるのではないか、またわが国においても円安で株価上昇ではありますが、円安は日経平均の対象銘柄が多い製造業にプラスになっているんでしょうけど、さらなる原油コストの上昇で悪影響も大きいのではないかと思えてなりません。
原油や金の価格がもし現在の2倍などという事になれば世界的な超インフレという事にはなりませんか?
どうしても理解できないことがあります。
LTRO第1弾で十分効果があったのに、第2段を行う理由は何なのでしょうか?
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