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何か「すっきり」しない増資インサイダー摘発  その1

2012年03月23日

何か「すっきり」しない増資インサイダー摘発  その1

 昨日(3月21日)、証券取引等監視委員会(以下「監視委」)が2010年7月の国際石油開発帝石の公募増資をめぐり、中央三井アセット信託銀行のファンドマネージャーが主幹事証券の営業社員から事前に得た情報でインサーダー取引をしたとして、中央三井アセット信託銀行に5万円の課徴金を科すように金融庁に勧告しました。

 かねてより指摘されていた「増資インサイダー」疑惑の初めての摘発なのですが、考えれば考えるほど「すっきり」しない点が多数出てきます。順番に書いていきますが、ポイントが非常に多いため2~3回になると思います。

 監視委によりますと、被害者が「株価下落で調達額が下がった発行会社つまり国際石油開発帝石」と「海外投資家から不信の目で見られる日本の株式市場」で、加害者が「インサイダー取引を行った中央三井アセット信託銀行(運用担当者は個人的収益を得ていないため処罰の対象外)」と「情報を漏らした主幹事証券会社(現行の金商法ではインサイダー情報を伝達した側は処罰の対象外で、監視委の発表でも特定されていないのですが、巧みに「野村証券」だとリークされています)」となっています。

 それでは、「被害者」であるらしい国際石油開発帝石の行った公募増資を少し詳しく見てみましょう。

 増資発表のIRは2010年7月8日に出ています。発行される株数は国内分・海外分ともに566,000株ずつで、双方に84,000株ずつの追加発行の権利が幹事証券会社に付与されているため、合計1,300,000株となります。ところが、発表直前の発行株数が2,350,000株であり、実に55%も株数が増えたことになります。

 幹事証券は、国内分が野村証券・ゴールドマンサックス証券・みずほ証券、海外分がGoldman Sacks International, Nomura International plc, JP Morgan Securities Ltdです。すべて共同主幹事という位置づけですが、国内分は野村証券、海外分はGoldman Sachsがグローバル・コーディネーターになっておりそれぞれの実質配分権があったはずです。
 
 株価は、インサイダー情報を得たとされる2010年6月30日が497,000円(引け値、以下同じ)、実際に保有株の売却と新たな空売りをしたとされる翌7月1日が485,500円、増資発表の7月8日が476,000円(発表は取引終了後)、発表翌日の7月9日が415,000円(12.8%下落、この日の出来高は98,818株)、値決め日の7月26日が430,000円(発行価格は3%引きの417,100円、この日の出来高は直近最大の132,167株)、払込日の8月2日が417,000円、株券が交付された最初の取引日である8月3日が427,000円(僅かですが上昇していることに注意してください)となっています。

 因みに、2010年の高値は1月6日の733,000円、発表前の6月1日でも564,000円であり、同年の安値は増資後の8月17日の378,500円ですが、年末の12月27日には490,500円まで回復しています。

 また払い込み価格が417,100円なのですが、発行会社に入るのは402,050円(3.6%引き)で、差額が証券会社の手数料となります。つまり際石油開発帝石の調達した金額が5226億円で、共同幹事4社の得た手数料合計が195億円(!)なのです。

 これらの値動きを見てはっきりとわかることは、株価はインサーダー取引があったから下がったのではなく(報道はそういう書き方が多いのですが)、明らかに増資を発表したから下がったのであり、さらに巨額の新株は「ほぼ安値で値決めされ」「実にうまい具合に吸収されている」のです。つまり明らかに短時間で「荒稼ぎされた」形跡がはっきりあるのです。

 つまり、監視委のコメントとは違い「被害者」は国際石油開発帝石ではなく同社株の既存株主であり、もう1つの「被害者」とされる「日本の株式市場」というのは、数々の制度面の不備を放置して、特に海外の証券会社や(発行会社の株主であったことはなく、増資後も株主ではない)投資家を不当に儲けさせた当局の「言い訳」にすぎないのですが、これらについては次回以降に詳しく解説します。

 今回の摘発はこういった「制度面の放置」に対する批判をかわすために、とんでもなく数多くある類似事例の中から「たまたま、あるいは意識的に狙った」事例をスケープゴートにし、「日本の証券市場にとって前例のない非常に重大な事案」(監視委幹部)に仕立て上げたのです。

 監視委や金融庁にしてみれば、課徴金が僅か5万円であることは問題ではなく(民間企業でないためコスト感覚というものがありません)、摘発したこと自体が「得点」となり、この際、何か政治的に有効利用するはずです。それがAIJ投資顧問事件から世間の注目を遠ざけるためなのか、野村証券を銀行傘下に入れるためなのかは、今のところ不明です

 ただ中央三井アセット信託銀行とは、三井住友信託銀行の発足(4月1日)に伴い消滅する名前であり、情報を漏らしたとされているのは幹事証券4社の中の野村証券だけで、外資系のゴールドマンサックスとJPモルガン、それに銀行系のみずほ証券は「全く疑われていない」のです。つまり日本の金融行政では銀行は「性善説」、証券会社は「性悪説」、外資系証券会社を含む外国人は「触れられない聖域」という本誌の「仮説」に符合します。

 まだまだ続きます。

 少し長くなるのですが、週末ですので昨日付け「旧・内務省の亡霊が支配する日本 その2」で頂いたコメントにお答えしておきます。

 厚生労働省は消えた年金を公的資金で面倒見てもらうために、旧大蔵省の監督責任の追求をほどほどにするのでは?というご意見に対しては、残念ながら旧内務省である厚生労働省はそんなに「優しく」ありません。
 もとより年金が減ろうが無くなろうが、厚生労働省は全く自らの責任だと思っておらず、当然に加入者か国(税金)が負担するものと思っています。
 従って「加入者のために公的資金で補填させるために旧大蔵省の監督責任をほどほどにしてやろう」などと考える必要もなく、「省益の拡大のチャンスとしてガンガンやってくる」だけなのです。
 厚生年金基金に厚生労働省から「素人」が大量に天下りしていることも、「それが何か?」という程度です。

 もう1つ頂いている「官僚組織」を何とかするために政治に期待するしかないのでは?とのご意見に対しては「全くその通り」なのですが、残念ながら「それがほぼ不可能」なのです。しかし、それなりに考えてまた書くことにします。

 「官僚、とりわけ旧・内務官僚」は鵺(ぬえ)なのです。鵺の意味はWikipediaを見てください。


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コメント
中央三井アセット信託銀行へ海外ファンドが支払った報酬:約350万円

三井フイーを20%としますと、ファンド利益金は1750万円。報道記事の利益1400万円からフィーを25%としますと、ファンド利益1400万円。

しかし、中央三井アセット信託銀行への課徴金は、5万円でありやったもの勝ち!別に、営業停止を受けるでもなくですから!


公募増資&オーバーアロットメントによる売り出しは、証券会社<海外の証券会社も含む>が買い取り引き受け、投資家へ販売するシステムですから、引き受け証券会社は投資家へ販売が100%できなければ買い取り引き受け会社が、抱え込むことになります。

公募増資株等を購入する投資家<証券会社等の法人>は、出資に応じてもいいけど、損失は出したくはないかと。そこで、買い取り引き受け会社と購入予定の証券会社等の間には、阿吽の呼吸ができますから、公募増資等発表前に株価が不可思議な動き<発表直前にではなく、もう少し前に高く>をします。

それは、空売り建て<つなぎ売り>をし、増資で取得した株券で現渡し決済ををするためのある意味で株価操作ですね!証券会社間の阿吽の呼吸で、空売り価格ーまだ決定もしていませんけど発行価格や売り出し価格の差額が増資株を取得した証券会社の利益になります。このことが慣習化していますから、金融庁が、公募増資<売り出し>発表後から発行価格等決定日までの間に空売りをし、増資株の取得をして現渡し決済することを罰則も設けて規制しました。

それでない<証券会社間に阿吽の呼吸がないと>と大規模な公募増資等による事業資金調達が厳しいからでもあります。この公募増資等なら、第三者割当増資にある増資により発行株数が25%以上の希釈率となると、株主総会決議、或いは、第三者の承認が必要ですけど、公募増資ならその必要はありません。

公募増資等の買い取り引き受け会社の利益は、発行価格ー引き受け証券会社の発行会社への払い込み金額との差額が手数料です。ですから、引き受け証券会社及び公募増資株式を購入する証券会社には、互いに利益を弾けるシステムが出来上がっているのです。それは、大手証券会社には、お互い様ですから!

大型公募増資銘柄の株価の動きは、確かに不可思議<管理した株価操作>!

7261<マツダ>は、24年2月22日に公募増資等の発表をしました。<株価推移と信用売り残推移>      <売り残>
24.1.20週 117~132円   473万株
     27週 127~142円   536万株
   2.03週 123~135円   686万株
     10週 134~152円  1263万株
     17週 143~170円  1815万株
     24週 134~168円  4690万株

と、22日発表前に24日週前の17日週にかけての株価上昇と、信用売り残の増加。また、発表前日の21日昼休みにロイターマツダの公募増資報道をし、前場出来高1285万株から、後場<138~249円>1億6745万株に急増し、日証金・新規貸株1648万株申し込みとなり、残は、前日残432万株→2011万株に急増<21日ですから空売り規制前>。

発行価格・売り出し価格 124円
払い込み価格・118.88円

1株当たり5.12円<4.3%>が買い取り引き受け及び売り出し証券会社の手数料。


発行価格決定は3月5日でしたから、6日からは、公募増資株を取得して現渡し決済目的の空売り規制は受けません。その後の日証金・貸株残推移と信用売り残推移
        <日証金貸株残>
3月01日    3889万株
  02日    5202万株
  05日    7151万株・・・大引け後発行価格決定ですけど、5日に決定される確率が高いですから!でも規制期間
  06日    8887万株
  07日    8575万株
3月09日  1億1137万株
  12日  1億2094万株 
  13日    3069万株・・・現渡し決済可能日
  14日    1777万株

信用売り残
2月24日   4690万株
3月02日   8387万株
  09日 1億5909万株
  16日   3378万株・・・現渡し決済で急減。

勿論、現渡し決済目的だけの空売りだけではなく「純空売り」もありますけど、一連の株価、日証金貸株残、信用売り残からも、公募増資買い受け引き受け会社と増資株購入投資家<証券会社等>とには阿吽の呼吸があると思料します。
 テーマと直接関係ない話で申し訳ないのですが、今日のフジテレビ9:55からの「知りたがり!」約2000億円の年金消失AIJ強制調査へ、という番組を見ていて本当に腹が立ちました。

 30代ぐらいのどこかの会社で年金制度に詳しいというのが出てきたのですが。やれ「企業年金で欠損がでているのはごく一部だとか」「厚生省OBのコンサルタントは、騙すつもりで企業年金に天下りした担当者にAIJを紹介したのではなく、本当に良いと思って紹介したと思う」とか、一見真面目そうな顔をして話していました。
 
 アナウンサーもコメンテーターも納得顔で聞き入っていましたが、ふざけた話ですよね。テレビ局自体の認識の甘さにあきれ果ててしまいました、この件に関するテレビ局としての見解はないのでしょうかね。自分で良く調べもせず、偏向のかかったおとぎ話を垂れ流すなんて許せないです。

 テレビに出る前に上司から、余計な事は言うな、当たり障りの無い事だけしゃべれと、強くいわれて来たのでしょうね。


今も昔も、新聞・テレビの大本営発表しか聞いてないとま暗闇に落ちてしまいます、くわばらくわばら。


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