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あの事件はどうなった その4

2010年12月08日

あの事件はどうなった その4
「プリンストン債事件の闇」

 平成22年12月6日に、ヤクルト本社(東証一部上場。コード2267)が、1990年代の証券投資の失敗を埋め合わせようとして、投機的なデリバティブ取引に手を出してさらに失敗し、1998年3月期に1000億円以上の損失を出したことに対し、株主が当時の経営陣に533億円の支払いを求めていた株主代表訴訟の件で、最高裁が運用責任者の元副社長のみの責任を認めて67億円の支払いを命じる判決がありました。
  
 この事件の本質は、この元副社長が主導して「プリンストン債」なるものを使って損失隠し(飛ばし)をしていたことと、この「プリンストン債」なるものは全くの詐欺商品であったことと、最後にこの元副社長が5億円超のリベートを受け取っていたことなどです。この元副社長は特別背任で実刑判決が確定しています。

 まず、損失隠しについては、当時はバブルの後始末に追われている事業会社や金融機関が数多くあり、多くの損失隠し(飛ばし)のスキームが横行していました。そして、その大半が外資系の金融機関から持ちこまれ、彼らにボロ儲けをされただけでなく、さらなる損失を抱え込むケースが続出していました。しかし、これらについては一昔前のことなので、ここでは書かないことにします。

 さて「プリンストン債」とはどういうものだったのでしょうか?
 マーチン・アームストロングなる男が、為替や株の取引の天才であるという触れ込みで日本の投資家から資金を集めて「運用」し、年間20~40%の利回りを出すということでした。その資金を集めたのが、日興証券のOBが代表を務める証券会社で、含み損の大きく出た有価証券を簿価で買い取って、高利回りの「プリンストン債」で何年か運用すれば、含み損がなくなるというパターンでした。また、担当者へのリベートも横行していたようです。

 マーチン・アームストロングは年に何回も来日して講演会を開きました。名だたる日本の事業会社や金融機関が集まって熱心に話を聞いていました。また東洋経済やNHKなどの名だたるマスコミも、好意的な報道をしていました。特にNHKは特集を組み「円建てで為替リスクがないのに、高い利回りが得られる」という全く意味不明なほめ方をしていたのを覚えています。

 私も、一度だけ講演を聞きに行ったことがあります。基本的にはエリオット波動のような循環論でしたが、直感的に「相場の一方向に賭ける投機で、安定的な利回りを出す手法ではなく、非常にリスクが大きいもの」と感じたのですが、周りのみんなが、あまりにも無邪気に感心して聞いているので、あほらしくなって帰ってきました。

 問題が発覚したのが1999年の夏ころで、最終的に1200億円程度の残高に対し、残った資産が50億円くらいしかないことが分かりました。もちろん顧客は全員日本の事業会社と金融機関でした。
最大の問題点は、顧客財産を管理していたはずのリパブリック・ニューヨーク銀行が、顧客の財産を、トレーディングで大損を出しているマーチン・アームストロングの口座の補てんに、どんどん使っていたことです。この点に関しては、アームストロングはいまだに、リパブリック・ニューヨークが勝手にやったことで、自分は無罪であると言っていますが、当然収監されています。

 その後、アームストロングの取引損は600億円以上だということが分かりました。NHKがほめたのですが、残念ながら損失の大半はドル・円の取引の損失だったようです。それ以外に、手数料を5%ほど取っていたのですが(一部はリベートになりました)、それでも計算が合わないのは、顧客の半額くらいになった資産を簿価で引き取っていたので、額面が膨らんだからのようです。

 しかし、この事件は意外な結末になりました。
リパブリック・ニューヨーク銀行を買収したHSBCが、最終的に600億円以上を支払ってきたのです。計算上は「プリンストン債」自体での損失がほとんど返ってきたことになります。
 その理由は、リパブリック・ニューヨーク銀行のHSBCへの売却をスムーズに進めるために、リパブリックのオーナーであるサフラ氏が、自分の持ち株の売却代金の一部を支払うと言ったからです。買収資金総額は1兆円を超えており、オーナーの取り分も数千億円の予定だったので、この件が未解決であれば買収が流れてしまう恐れがあったので、600億円支払った方が得との計算があったはずです。
 ところが、このオーナーのサフラ氏は、その直後に自宅で謎の焼死体となって発見されました。一説ではロシア・マフィアの関与が囁かれましたが、真相は不明です。従って、最終的にこの600億円は何処から支払われたかは、分かりません。

 ただ、これは非常にラッキーなケースで、外資系の金融機関の甘言に乗ってしまった場合は、ほぼ泣き寝入りとなります。
 日本人は、当局も含め、いまだに外人のいうことはみんな正しいと思う傾向があります。同じことを日本人がやったら、それこそ大騒ぎをします。その事例はいずれ書こうと思っていたのですが、懐かしい「プリンストン債」のニュースを聞いたので、とりあえずご紹介しました。

平成22年12月8日

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コメント
小説「巨大投資銀行」(黒木亮 著)においてプリンストン債の顛末が書かれてましたが、当ブログで最終結末を知ることができ興味深く読ませて頂きました。(泣き寝入りせずにすんだことは驚きです!)
小説「巨大投資銀行」で書かれている様々な有名事件を読んで理解しにくかった箇所や物語の構成上、省かれたであろう部分を、当ブログを読むことで補完しているような感覚を持っております。
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