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ギリシャよりはるかに難問のスペイン危機  その2

2012年04月20日

ギリシャよりはるかに難問のスペイン危機  その2

 スペイン危機が深刻化すればギリシャ危機の比ではないと思う理由は、単にスペインの経済規模がギリシャの約5倍あることだけでなく、歴史的に考えてユーロ圏全体で支援しなければならない「動機」が希薄な気がするからです。

 そもそも統一通貨・ユーロの行方を考えるにはEU(欧州連合)の基本理念を理解しておく必要があります。EUとは、現在の参加27か国それぞれの国家主権は尊重しつつも、経済・通商・金融だけでなく外交・安全保障・司法・内務各分野での協力枠組みを作り、冷戦終了後の世界で米国に対峙する一大国家連合を目指すためのものなのです。

 従ってこの構図の中に日本が「大金を持参しても」入り込む余地はなく、逆に米国との関係から慎重に進めなければならないことを野田政権は全く理解していないのです。まさに600億ドル(4.8兆円)は「国家戦略なき浪費」となるのです。

 話を戻しますが、統一通貨・ユーロとはそのEUの基本理念のために必要とされる通貨政策なのです。当初の目論みでは、為替リスクを排除することにより域内の水平分業がスムーズに行われて経済効率が向上し、統一金融政策をとることによって新興経済国は低い金利で資金調達ができて経済が発展し、先進経済国では域内の安い労働力を使って競争力を上げることが出来るなど、良いことづくめだったはずです。

 ところが経済が停滞し始めるとたちまち問題が露呈します。ひとたび財務問題や銀行の不良債権問題が発生すると、これらの国は「通貨高」「金利高」「緊縮財政による不況や失業」に苦しむことになり、経済回復のための方策がほぼ封じられてしまい域内諸国からの援助(債務カットや資金援助)だけが頼りとなってしまうのです。

 基本的にはEUの基本理念は変えられず、統一通貨・ユーロも止めるわけにはいきません。そのための「負担」が限界に来るまで頑張るはずです。

 しかしもう一つ考えなければならないのは、EUもユーロ構成国も決して一枚岩ではなく、援助総額が膨らむにつれて問題国すべてを援助するコンセンサスが取れなくなり、結果的にユーロの仕組みの見直しや変更が出てくるかもしれないことです。

 ギリシャの場合は経済規模が比較的小さいにもかかわらず、最終的には大変な難交渉となり負担額も決して小さくなかったのですが、ギリシャはヨーロッパ文明発祥の地でEUの基本理念である米国に対峙するためにも、欧州のアイデンティティーとして切り捨てるわけにはいかなかったのです。

 ところが歴史を振り返ってみると、スペインは(ポルトガルもそうですが)決して全欧州をあげて救済するほどの「身内」でもないのです。

 そもそもEUの前身であるEEC(欧州経済共同体)は、1958年に西ドイツ(当時)・フランス・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグの旧・フランク王国の6か国でスタートしました。フランク王国とは東西に分裂したあとの西ローマ帝国がゲルマン人の侵入で滅びた後、そのゲルマン人の一派のフランク族のクローヴィスが西欧全域をほぼ統一して出来た大国で、9世紀に入ってカール大帝の死後に分裂していったものです。

 EECはその後1973年に英国、デンマーク、アイルランド、1981年にギリシャ、1986年にスペインとポルトガルが加盟し、1989年以降に自由主義経済圏入りした東欧諸国が一挙に加盟して急拡大するのですが、それではスペイン成立の歴史を見てみましょう。

 スペインは、西ローマ帝国滅亡後にゲルマン民族の西ゴート族が西ゴート王国を建てたのですが、711年にイスラム教徒のウマイヤ朝に滅ぼされ、以来イスラム支配が続きます。1492年にカトリック教徒のイザベラ女王とフェルナンド国王が完全にイスラム教徒を放逐してエスパーニャ王国としてスペイン半島(ポルトガルを除く)を統一します。

 ところが、西欧の主要地域はフランス王国や神聖ローマ帝国(後のドイツ)が勢力を広げており、地中海貿易はジェノアやベニスなどのイタリア商人に独占されており、香辛料獲得のための喜望峰回りインド航路は一足先に独立したポルトガルに抑えられていました。そこでイザベラ女王はコロンブスなどに西回りでインドに向かわせ、その結果発見した南北アメリカ大陸の植民地経営で膨大な富を得ます。

 ところがスペインはこれら膨大な富を国力発展のために使わず何となく浪費してしまい、あげく1588年英国艦隊に敗れてあっという間に衰退がはじまります。その後も1640年に一時併合していたポルトガルが独立し、1648年にはこれも領有していたオランダが独立し、その後のアフリカ各地の植民地化の恩恵もほとんど受けることなく衰退が続きます。

 第二次世界大戦後もフランコ将軍による軍事独裁政権が長く続き、フランコ死後の1978年にようやく民主憲法が制定されて国際社会に復帰し、1986年にEECに加盟します。

 つまりスペイン(ポルトガルも)の歴史を見ていくと、とても欧州の「身内」だと言えないのです。EECやそれを引き継いで1993年に発足したEUや、その加盟国のうち財政赤字などの条件を満たした国でスタートした統一通貨・ユーロの「中心メンバー」とは言えないのです。

 そのスペインが財政危機に陥りギリシャと同様の支援が必要となった、単に経済規模がギリシャの5倍もあること以外に、ユーロ圏が団結して支援に回ることは非常に想像しにくいのです。

 これが直観的に思うスペイン危機の「問題の本質」なのです。

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コメント
スペインは統一後にユダヤ人も追い出していますよ。現在の王家もブルボン家なので、仰られるように見捨てられるとは思えませんが…
スペインの政府債務残高はGDPの75%でドイツの79%を下回り、ユーロ圏でスペインよりGDP比債務残高が低い国はオランダとフィンランドだけです。一番の問題は民間セクターの住宅バブル崩壊と消費バブル崩壊による企業、個人に圧し掛かっている債務でこれが銀行への経営を圧迫する恐れがあり、国内景気縮小、政府債務残高の増加へと結びつくことではないかと思われます。 数字はともかくギリシャの財政危機とは根本的に違うところがあるのではないでしょうか?
壮大なファンタジーはEU当事者の糊としても必要だとは思います。ただ、ドイツを中心とする救済側の対応が日・米の危機対応と大きく異なるのは、むしろ目先の「危機」も利用して数十年の単位で新しい体制を作ろうとしている点ではないでしょうか。時間軸の置き方によって「本質」が異なって見えるかもしれませんね。次回の解説も期待しています。
 スペインはカトリックの国であり、スペイン語はイタリア語とならんでラテン語直系でどこからみても西欧の一国です。この点はギリシャとは全く異なります。
 歴史的にはフランス国王を皇帝選挙で破り神聖ローマ帝国皇帝となったスペイン国王もいましたし、カトリックの保護者という立場もあり、ヨーロッパ諸国間の政治問題に深くコミットしてきた国でもあります。コミットしすぎたため戦争しすぎる結果となり、消耗し、そのことが衰退の一因となったと考えられます。
 また、西葡両国は中南米諸国との密接な関係があり、EUにとっては両国の持つ意味は少なくないと思います。
スペインは西の要塞
EUがスペインを見放す可能性は極めて低いと思います。見放す時は、EUそのものが瓦解する時でしょう。
スペインが破綻した場合の経済的インパクトはもちろんですが、地政学的にも、西欧にとってスペインは西と南を押さえる要塞なのです。
事実、スペインがレコンキスタを果たした頃合から、西欧はかつてない発展を見ました。一方で同時期にギリシャは完全にイスラム圏に飲み込まれました。
更に遡っても、スペインが欧州世界の一翼を担っていた時代は欧州世界は繁栄し、
そうでなかった時代は、衰退あるいは混乱していました。
現在を見ても、スペインは宗教ではカトリック、文化面ではローマやルネサンスを通じて、西欧と世界観を一つにしています。
アメリカが圧倒的パワーだった20世紀ならともかく、スペインを切り離せぱ間違いなく欧州衰退が加速するでしょう。
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