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ギリシャの「ユーロ離脱」について正確に考える

2012年05月10日

ギリシャの「ユーロ離脱」について正確に考える

 「改めて日本政府に対する真摯な提言」シリーズで、最初の「真摯な提言」として「円の国際化(基軸通貨化)を推進するべき」について書いている途中だったのですが、再度中断してこの話題にします。

 ただ、そのシリーズで本誌が主張したい「日本が世界で唯一戦える武器である通貨(円)をもっと活用して、世界における日本の存在感を拡大する」や「通貨(円)及び通貨政策は、国家にとって最も重要な戦略」とも、決して無関係ではないテーマなのです。

 つまりEU(欧州連合)あるいは全欧州の、通貨(ユーロ)に対する基本的な考え方に関するものなのです。

 まず、フランスの政権交代を受けて早くもEU(欧州連合)が経済政策の微修正に動き出したと報道されています。今までの「財政再建一辺倒」から「成長と財政再建の両立」に移行し、具体的にはインフラ整備や労働市場改革を柱とする成長戦略に踏み切るようです。

 これは昨日も書きましたように、「ユーロ」とは全欧州が米国に対峙するために「政治的」に不可欠な戦略的通貨制度であり、何が何でもその「維持」が最重要政治課題であり、そのための「運用ルール」などはいくらでも臨機応変に変えるもので、フランスやギリシャの政権が代わったからといって「ユーロ」が崩壊するとか分裂することは絶対に無く、「妥協」するはずだという本誌の主張を早くも裏付けたものです。

 「ユーロ」は政治的に維持されるのです。ただ、経済政策や金融政策という「運用ルール」も成長重視に微調整されるものと思われ、結果的に「ユーロ」は弱含みになると思われます。

 むしろ、「成長と財政再建の両立」への移行という「政治的判断」自体の中に、「ユーロを引き下げる(弱くする)」ことが含まれているはずです。それほど「通貨及び通貨政策」は国家(ユーロの場合は国家連合ですが)にとって重要なことなのです。

 次に、昨日(5月8日)の世界の金融市場では「ギリシャのユーロ離脱」が囁かれ、NY株式続落の理由となっていたことも事実です。それでは、ユーロ首脳が「政治的」にギリシャを離脱させることはあるのでしょうか?

 

 実は、「ユーロから離脱する(させる)ルール」が無いのです。

 「ユーロ」構成国(現在17か国)になるためには、まずEUに加盟し(現在27か国)、その中で財政赤字やインフレ率などの「基準」をクリアしなければなりません。正確にはEU加盟国でも「為替相場メカニズム(ERM)」に加入していなければならず、英国、スェーデンなどが未加入(正確には1990年代にヘッジファンドに攻撃されて離脱したまま)なのですが、説明が長くなるので省略します。
 
 従って「ユーロから離脱する」ためには「EUから離脱する」しかないのです。

 「EUからの離脱」については、2009年12月発効のリスボン条約で初めて規定され、「当該国が希望して」「加盟国の過半数が賛成したら」「2年後に離脱」出来るようになりました。しかし加盟国が「勝手に離脱する」ことや、逆に特定国を「追放する」ことは出来ないようになっています。

 つまり、ユーロからも「勝手に離脱する」ことや、逆に「追放する」することは出来ないと考えられるのです。もちろん「条約」を変更すればよいのですが、リスボン条約ですら締結に数年かかっていたため、現実的ではありません。

 昨日の国際金融市場では「ギリシャの新政権はいずれにしても融資の条件である緊縮財政策をとらず、従って融資を受けられず、資金が枯渇してユーロから離脱する」という「無責任なコメント」が出ていました。

 具体的には何か「政治的救済措置」がとられるはずです。「ユーロ」はそれくらいで簡単に壊すわけにはいかないからです。

国家(ユーロは国家連合ですが)にとって「通貨及び通貨政策」というものは、非常に重要な「国家戦略」なのです。「円」が明らかに戦える武器としての条件を整えているにもかかわらず、財務省や外務省の「省益」を優先して、この武器を全く使おうとしていないことは明らかに「国益」を損なっていることになるのです(次回に詳しく書きます)。

 逆に、ユーロ支援のためにIMFに600億ドル(4.8兆円)もの資金援助をすることは、日本はEUにもユーロにも加盟できないので全くメリットが無いだけでなく、米国との関係を含めた今後の日本の通貨政策を考えると「恐るべき愚策」なのです。


 そうは言っても、明日からはまた「その日本政府」に「真摯に提言」していくことにします。

 先日無罪判決となった小沢一郎裁判は、検察官役の指定弁護士が控訴しました。やや意外だったのですが、その背景なども近々書くことにします。お陰様で「闇株新聞」のテーマだけは全く不自由しません。


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コメント
「日本はEUにもユーロにも加盟できない」とのことですが、EUの加盟規約にそのような規定があるのでしょうか?
常識的に言えば、日本で真面目に検討されたことはまずないだろうと思いますが、EU側では別に法的に排除しているわけではないと思います。
トルコが一時期加盟の手続きを進めていましたが、今となっては実現の可能性はきわめて小さくなりました。あのトルコが加盟するにあたって、EUの規約に抵触するというような話は当時なかったように思います。
とすると、将来もしEUが拡大路線に走ったら、そのときの状況によって、日本の加盟が選択肢にのぼってくるかもしれません。妄言失礼しました。
政治的にギリシャをユーロに維持しようとする意思が働くのは基本形として、その限度が少しずつ試されているのが現在。ありえないことはない、というぐらいのポジショニングが米国での見方。制度に無知でナイーブに反応しているわけでもない。満を持して、過半数が賛成して2年後にEU離脱することが正式決定するとか、もっと早くその可能性が確実になった段階ではすでに遅い。
ギリシャが脱退すると、ユーロがドイツマルク化して行き、それに適応できるのはドイツのみ。
つまり、ドイツなど輸出で潤っている国にしてみたら、劣等生と同じクラスにいて易しい為替レートで楽に儲けたい。
ユーロを維持し南北格差は、ヨーロッパの差別構造を考えたら、「そんな細かい事はいいよ」で乗り切ることも可能か?とも思うが
、劣等生の行動は予測不能。また彼らにもナショナリズムがある。
ギリシャの離脱、ユーロのドイツマルク化、離脱の連鎖、ユーロのドイツマルク化完成、ドイツ大不況・・・このシナリオも考えておくべきだと思う。
ユーロ崩壊などないという点には完全に同意いたします。

ただ、私は日本はアメリカから離れ、EUに近づくべきと思いますね。それが警戒されずにアメリカの属国から抜け出す近道だと思います。
まだ皆さん覚えていると思いますが、北京オリンピックの前、日本ではすべてのマスコミ、経済人は「中国経済はオリンピックまでだ。そのあとすぐに崩壊する。」と主張していました。時は過ぎ、全員ハズレが確定しましたが、反省した人は皆無、自分の予測の誤りを分析した人もゼロでした。自分の主張が完全に外れても何の釈明もしない経済評論家も記者も経営者も、3歩あるけばすべて忘れるニワトリ脳なのでしょうか?

ユーロは瓦解論、ギリシャは離脱論が流行です。ひとりの言いだしっぺと100人の受け売りという構図がここでも繰り返されていると感じます。また、予想が当たれば宣伝し、外れたら黙っているつもりでしょうか。

私のEU予想はこうです。世界が富と貧困を包含するように、EUも富者と貧者を並存させ存続すると思います。単一ユーロは、単一の価値観、各国で平等な経済発展、安定した社会の推進力になりません。EUは国債の自国保有ルールとか、EUによるドイツの投資制限とギリシャの投資補助の決定とか、企業部門の利益を個人に移転する税制とか、新しい政策を考えだして、苦しみながら、理想から程遠い姿で存続してゆくと思います。

根拠は、半世紀もかけて合意し到達した仕組みを、すぐに放棄するとは思えないからです。それだけです。

20年もしたらギリシャ離脱論の正否が出ているでしょう。大事なのは、日々状況が変わるので予測も変わって当然、当初の予測に固執しないこと、あっさり前言を翻すことです。もともと経済は科学ではありませんから。



ユーロ防衛がドイツにとっての第3次世界大戦だとしたら、今回も負ける気がする(勘ですが)
2度あることは3度あるもの。
ドイツはこの手の世界を相手にした戦いに、何故か弱いです。
ギリシャの通貨ユーロからの離脱の問題の本質は、ギリシャの既存の債務がユーロ建てと言うことだと思います。ユーロを離脱したから勝手にドラクマを大量印刷して返済された債権者(フランスをはじめ各欧州の金融機関やECB)は、ユーロとの為替レートの問題で大きな損失を被るし、ギリシャ国民はそれこそトラックで野菜を買いに行かなくてはならなくなります(トラックに野菜を積むのではなく、通貨ドラクマを載せていかなくてはならない)、超インフレとなり誰もドラクマを信用しない。だから急進左派連合も緊縮財政に反対してもユーロからの離脱は求めていないのでしょう。一方ユーロ各国もこれ以上のギリシャ債務の棒引きには金融機能の安定や経済の混乱から望んでいない。要は条件闘争の駆け引き材料で持ち出しているだけなのに、ギリシャ国民は急進左派連合の甘い言葉に乗せられていることに気付くべきなのですが。
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