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JPモルガン・チェースの巨額損失の不思議  その4

2012年05月23日

JPモルガン・チェースの巨額損失の不思議  その4

 2日続けて同じ話題となるのですが、昨日付けの記事で「JPモルガンは90年代には大企業相手の銀行業務に特化していましたが、投資銀行業務を行っていませんでした」と書いたのは、ご指摘いただきましたように「誤り」です。大変申し訳ありませんでした。

 90年代からグラス・スティーガル法が徐々に骨抜きにされていったのですが、どうしても当時の米国銀行の証券業務と言えば米国債売買(当時のプライマリーディーラーの約半数が銀行系だったと記憶しています)というイメージが強かったことと、そもそも投資銀行業務とは常に投資銀行サイドから「潤沢な資本」を求めて銀行サイドに接近するものだという「先入観」があったためで、大変失礼いたしました。

 さて、改めて考えるJPモルガン・チェースの巨額損失の根本的な問題とは、「投資銀行業務」そのものの存続が危うくなる可能性があることです。

 「投資銀行業務」は、特に1980年代以降の米国経済だけでなく世界経済の拡大を、良くも悪くも支えてきました。グラス・スティーガル法が1999年に撤廃され、金融危機を経て「投資銀行業務」は巨大金融機関による寡占状態となっていました。

 「投資銀行業務」のエネルギーを維持するためには、この巨大金融機関による寡占状態が好ましいのかどうかの答えが出ないうちに、今回の巨額損失は間違いなく「投資銀行業務」そのものを縮小してしまいます。世界経済の拡大を支えてきた「エンジン」の1つが消滅しないまでも力を失ってしまうのです。

 ここからは、JPモルガン・チェース以外の巨大金融機関による「投資銀行業務」の歴史と実情を見てみることにします。

 まず、シティグループからです。

 1980年代に最も活発だった投資銀行はソロモン・ブラザースでした。特に債券業務に強く、ジョン・メリウェザー率いる債券アービトラージ部門は莫大な利益を上げていました。

 ソロモン・ブラザースは「潤沢な資本」を求めて1982年に大手商品取引会社のフィブロ傘下に入ったものの1986年には実権を取り戻し、逆に1987年にレブロンを買収したロナルド・ペレルマンに買収されそうになるとウォーレン・バフェットに7億ドルの出資を仰ぎます。

 しかしソロモン・ブラザースは1991年の国債入札不正事件で経営危機を起こし、一時暫定CEOとなったバフェットの意向でスミス・バーニーと合併し、現在はシティグループの中で完全に埋没してしまっています。シティグループからすると、当時のソロモン・ブラザースのノウハウを全く生かしていないことになります。

 余談ですが、この国債入札不正事件で責任を問われて辞任したジョン・メリウェザーは、自ら設立したヘッジファンドLTCMが1998年に巨額損失を出し、もう一度世間を騒がせます。また、このLTCMの破綻処理を主導したのが当時ゴールドマン・サックスCEOだったジョン・コーザインで、最近破綻したMFグローバルの代表です。因果は巡るのです。

 1990年代のシティコープ(当時)はジョン・リードCEOのもと、傘下のシテイバンクが全米最大の商業銀行であり、また世界最大のクレジットカード発行体でもあり、世界90か国に拠点がありました。

 一方、サンフォード・ワイルは、積極的な買収で大きくなった金融会社プライメリカを1993年に大手損害保険会社のトラベラーズと合併させます。新社名はトラベラーズとしたのですが、もちろん実権はワイルが握りました。さらに1997年に前述のソロモン・ブラザースを90億ドルで買収し、傘下のスミス・バーニーと統合させます。

 そして1998年に、このシティコープとトラベラーズが合併するのですが、実はこれは銀行の保険会社との兼業も禁止するグラス・スティーガル法に違反していました。

 ワイルは、当時まだ腹心の部下だったジェイミー・ダイモンとともに抜け穴を探し出し、大半の保険業務を2年以内に売却することを条件に当局に認めさせます。実際は翌年の1999年に同法が撤廃されたため売却する必要は無くなりました。

 合併さえしてしまうと、ワイルは共同CEOについていたジョン・リードと、自分の後継者のはずのジェイミー・ダイモンを追放してしまいます。そして売却の必要が無くなったはずの保険部門の大半を「相乗効果が無い」という理由で本当に売却してしまいます。

 ワイルこそ、買収により(というより「潤沢な資本」を求めて)規模を拡大した「投資銀行業務」の最終段階として「商業銀行」を手に入れたのですが、2006年の引退後まもなくの金融危機でシティグループは巨額損失を出し、500億ドルを超える公的資金のお世話になります。

 つまり、今後もしばらく「投資銀行業務」を積極的に行うことは難しそうです。

 一方、ジェイミー・ダイモンは同じ2006年にJPモルガン・チェースのCEOとなり、金融危機を最もうまく乗り切ったと評価されていたのです。

 他の大手金融機関については続きます。


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コメント
今回の事件に関して感じたこと:

アメリカの金融業は進んでいると言われてますが、それに対する規制もがんじがらめというか、日本の比ではないようですね。

知り合いのアメリカの弁護士事務所に勤める弁護士さんから聞いたのですが、監督機関だけでも、FRB(連邦準備銀行)、OCC(通貨監督局)、SEC(証券取引委員会)、CFTC(商品先物取引委員会)、FDIC(連邦預金保険会社)があるそうで、これだけの監督機関が目を光らせていながら、今回のような「不祥事」が起こるわけですよね。

ちなみに、金融危機を防ぐ目的でできたDodd-Frank法が実際に施行されると、消費者を守るためのConsumer Financial Protection Bureau: CFPB(消費者金融保護局?)というのを作って、あらたに監督機関に加えるんだそうです。

で、そのDodd-Frank法なんですが、その弁護士さんによると、とても複雑で、ページ数だけでも一千ページ近くあり、その一部を構成する、金融機関によるリスクのある取引を規制する、いわゆるボルカー・ルールには、何百という質問事項が記載されていて、このルールは誰にも理解できっこないよ、と言ってました。施行までにはまだまだ時間がかかるようです。(彼のところで、ヘッジファンドなどの金融機関に、法律の解説と施行に向けた進捗状況を報告しているそうで、弁護士さんにとってはいい商売のネタになっているようで)

こんな状況でも、アメリカの金融業は栄えるのでしょうか?いつか機会があれば、ぜひご考察ください。

ところで、その彼が、半分冗談で、中国の監督官庁がえらく興味を示していて、この法律を読み込んでいるので、この法律に一番詳しいのは中国の金融監督当局だろう、と笑ってました。

ご参考まで。

JPモルガンの巨額損失の続報を朝日新聞(6月15日)で読みました。
上院でダイモンCEOは具体的な投資の中身の公表を拒んだようです。
金融規制を急ぎたいオバマ政権と規制反対のダイモン氏との間で今後も綱引きが続くのでしょうが、果たして巨額損失の全容解明がなされるのか気になります。
また折に触れてJPモルガンの記事を書いて頂けるとありがたいです。
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