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昭和史最大の謎・近衛上奏文  その5

2012年07月30日

昭和史最大の謎・近衛上奏文  その5

 少し間が空きましたが、本日は「2.26事件」についてです。

 1936年2月26日未明、日本陸軍・皇道派(後述)の青年将校らが1483名の兵を率い「昭和維新・尊王討奸」を掲げて元老重臣を殺害して天皇親政を実現しようとしたもので、斉藤実・内大臣(元首相)、高橋是清・蔵相、渡辺錠太郎・陸軍教育総監らを殺害しました。

 まずこの時代の日本陸軍は、荒木貞夫や真崎甚三郎を中心として「天皇親政」による国家改造を説く「皇道派」と、近代的な軍備や産業機構の整備に基づく「国家総力戦体制」を目指す「統制派」に分かれて対立していました。

 精神論が中心の「皇道派」と、理論的に戦略を考える「統制派」の違いなのですが、1935年8月12日に「統制派」の中心人物である永田鉄山・陸軍軍務局長が執務室内で「皇道派」の相沢三郎中佐に日本刀で斬殺されてしまいます。「皇道派」の真崎甚三郎・教育総監が罷免された報復でした。

 つまり「2.26事件」の直前は、「統制派」が一時的に勢いを失い「皇道派」が勢いを取り戻しつつある時期でした。

 しかし「2.26事件」とは「皇道派」の青年将校が皇道派の目指す天皇親政を求めて行動を起こしたものなのですが、かといって「どうして重臣を殺害すれば天皇親政が実現すると考えたのか?」つまり近衛上奏文の言う「共産主義の影響は無かったのか?」と、「そもそも大尉クラスの青年将校が軍(皇軍)を何の権限で動員出来たのか?」つまり「皇道派の上層部が了解もしくは指示を与えていたのではないか?」という2つのポイントに絞って考えてみます。

 まず前者ですが、「昭和維新・尊王討奸」は「皇道派」の基本的な考えで、それが理論的に稚拙すぎることは明らかなのですが、かといって共産主義とも関係がありません。「2.26事件」とは共産党系青年将校の起こした軍事クーデター説が根強いのですが、単に「皇道派の理論」に沿って行動しただけです。

 青年将校に理論的影響を与えたのが国家的社会主義の北一輝であったところから出てきた説ですが、実際にはどの程度の影響力があったのかは疑問です。

 それより問題は後者です。

 確かに2月26日の行動開始は、まさに世界不況の真っただ中で特に農民の悲惨な状況を純粋に打破したかった青年将校の「フライング」ではあるものの、その考え方自体は「皇道派上層部」が日頃常に口に出していたものでした。つまり上層部が「口に出すだけ」だったものを青年将校が「実行」してしまったのです。

 しかし、いざ青年将校が行動を開始してしまうと「皇道派上層部」にはさまざまな思惑が浮かびます。ここでいう「上層部」で特に重要なのが、前述の荒木貞夫(元・陸軍大臣)と真崎甚三郎(元・教育総監)のほか、香椎浩平・東京警備司令官(中将)、山下奉文・陸軍省軍事調査部(少将)の4名です。

 まず、事件発生当日の2月26日の午後(詳しい時間は諸説あり正確には分かりません)、山下奉文が青年将校の代表に「陸軍大臣告示」を読んで聞かせたと「されて」います。

 その内容は(現代文で書きますと)、「君たちの行動は、国体の真の姿を現したものと認める。そのことは天皇陛下の耳にも入っている。軍事参議官(後述)も陸軍大臣もそう思えばこそ、心を新たにして天皇陛下のお気持ちを待つことにする」というものです。

 当然に青年将校は喜ぶのですが、「当たり前のことが確認できた」だけだったはずです。

 ところが、この「陸軍大臣告示」を起草した軍事参議官会議では、最初の「行動」が「真意」となっていたのです。全く意味が違います。つまり「真意」が分かると言っているだけで「行動」を分かったとは言っていないのです。

 ここで軍事参議官会議とは天皇の諮問機関なのですが、当日は諮問されていないため非公式に集まっただけでした。実際は当日早朝に川島義之・陸軍大臣が天皇に状況を報告し「速やかに鎮定せよ」と命じられています。従ってそもそも「陸軍大臣告示」とは何のために作られたのかもはっきりしません(単に「陸軍大臣より」だったとの説もあります)。実際は当日の軍事参議官会議で「皇道派」の荒木・真崎の主導で作成されたのですが、さすがに「行動」ではなく「真意」となっていたのです。

 つまりこの時点で「皇道派首脳」である4名は、とりあえず青年将校の「士気」が下がらないように時間を稼ぎ、その効果を最大限に利用しようとしたのです。その目的とは陸軍首脳を「皇道派」で独占するだけでなく、真崎甚三郎を首相にして維新改造内閣を主導し、(軍事行動を見せつけることによって)天皇も意のままに扱い、その威光を最大限利用して「皇道派が日本を支配する」ことだったのです。

 まさに現在まで続く「官僚組織の考え方」そのものなのですが、その思惑はたった半日で崩れ去ることになり、また新たな「思惑」が始まるのです。

 続きます。

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コメント
歴史の事について書くなら論の元になる一次資料の情報と
理屈の組み立てについてなにかしらに依っているならそれも索引として書いといた方が説得力ますと思います。

判断の元とした一次資料源をあかさずに論をぶつのはネットの普及により減ってきてますし

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