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米国金融危機で「あまり説明されていない」救済劇  その2

2012年08月28日

米国金融危機で「あまり説明されていない」救済劇  その2

 昨日の続きです。FNMAとFHLMCの救済劇について書き始めたところでした。

 2007年8月9日に、仏銀最大手のBNPパリバが傘下のモーゲージ担保証券に投資する3つのファンドを凍結したと発表します。欧米金融機関の「問題発覚」第1号でした。

 この日を境に欧米の信用市場が急速に逼迫して、モーゲージ関連の巨額損失が相次ぐことになります。しかしNYダウが最高値の14164ドルをつけるのは、その2か月後の10月9日のことでした。

 よくこの金融危機はサブプライム問題だと言われるのですが、正確に言うと2007年時点で13兆ドルに上った米国内の全モーゲージ(住宅用と商業用の合計)の担保不動産の価値が2兆ドルほど下落し、その2兆ドルを全世界(特に欧米)の金融機関が負担したという構造と言えます。ピークの残高が1兆3000億ドルだったサブプライムローンは、引き金にはなったものの問題のすべてではありません。

 それよりも特に欧州の金融機関がこれらの損失をすべて表に出していないとも言われ、不動産市況の更なる下落が、再度の金融危機を引き起こす構造は何も変わっていません。

 しかし当時のモーゲージ市場の混乱は、かえってFNMAとFHLMCのシェアを上げるという皮肉な現象となり、新規のモーゲージ組成に占める両社の割合が危機前の46%から76%へ跳ね上がっていました。それだけ社債発行による資金調達と(いくら低い自己資本比率が認められているとはいえ)資本増強が必要となってきていたのです。

 しかし2008年3月にベアー・スターンズが行き詰まり、最終的にJPモルガンが救済合併するのですが、最後になってジェイミー・ダイモンCEOが300億ドルの不動産関連資産(商業用と住宅ローン担保証券)の引き取りを拒否します。

 そこでこの資産を担保にニューヨーク連銀から300億ドルの融資することにした(つまり最終的な損失をFRBに押し付ける)のですが、当然にFRBは損失が発生した場合の補填を財務省に求めます。それよりも銀行持ち株会社でない投資銀行のベアー・スターンズにFRBが「いくら担保があるとは言っても」融資すること自体が非常に「無理筋」だったことになります。

 ところが財務省は反財政赤字法により議会が認めていない「損失補填」ができません。そこで苦し紛れに、財務省の「FRBの措置を支持する」という曖昧な書簡(注)と、モーゲージ運用大手・ブラックロックのローレンス・フィンクCEOに書いてもらった「十分な調査をしたところ、融資は十分な担保によって裏付されている」というもっと曖昧な書簡と、最後の最後にジェイミー・ダイモンが呑んだ11億5000万ドルの劣後ローン(つまりこの金額までの損失はJPモルガンが負担する)の三点セットで強行してしまいました。

(注)こういった書簡は当時の財務長官ヘンリー・ポールソンの「得意技」のようです。その後、モルガンスタンレーの株価が急落している時にも三菱UFJに対して「米国政府は海外投資家の投資活動を支持する」という曖昧な書簡で、まんまと1兆円を投資させています。

 そしてこの300億ドルの資産はMaiden Lane LLC(Maiden Laneはニューヨーク連銀の前の通りの名前です)というSIV(特別目的会社)が保有し、FRBの資産にしっかりと計上されています。そしてこの方式はAIG救済の時にも使われるのですが、これはAIG救済のところで解説します。

 だいぶ話が横道にそれてしまったのですが、要するに不動産とモーゲージを取り巻く市況が日に日に悪化していく中でFNMAとFHLMCの資金調達(増資と債券発行)も非常に困難となってきます。両社の決算も赤字が続き、2008年7月11日には両社の株価が急落してFNMAが10.25ドル、FHLMCが7.75ドルとなりました。

 その時点からホワイトハウスと財務省は、両社を公的救済するために議会と折衝を始めます(注)。その理由は間違いなく「米国政府が暗黙に保証」していると理解されている両社の発行ないし保証する債券が5兆ドルあり、少なくとも1兆ドルは海外投資家が保有しており、まさに「米国の信用」が問われることになるからでした。

(注)米国の行政の最高責任者は大統領で、その下に財務省など各省庁があり行政の実務を行います。一方大統領には議案提出権がなく、法律改正や新規立法はすべて議会の権限となります。議会はまさに「有権者の利益を代表して」これらの立法に当たります。つまり米国では、政府(行政・大統領)と議会(立法)の関係が非常に明確に分かれているのです。

 とにかく米国政府としては「救済」以外の選択肢が無かったのですが、問題が山ほどありました。ホワイトハウスが共和党のブッシュ政権(しかも任期があと半年もない)で、議会が民主党に過半を握られていることもあったのですが、それよりも両社や住宅関連事業に関係する議員も多く、政府の介入を快く思わないのが議会の基本的な考えでした。

 さらに両社に対して唯一法的監督権限のある連邦住宅金融庁(FHFA)も、その7月に設置されたばかりでお世辞にも強大な権限があるとは言えませんでした。

 まだまだ続きます。

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