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ソニー新株予約権付社債のリパッケージ取引とは?

2012年12月11日

ソニー新株予約権付社債のリパッケージ取引とは?

 2週間ぶりに「闇株新聞」を再開いたしますので、引き続き宜しくお願い申し上げます。

 さて、ソニーが11月30日に発行した1500億円の新株予約権付社債を、共同幹事4社のうちの1社のゴールドマン・サックス証券が複数の投資家から買い取り、新株予約権と社債部分を分離して社債部分を投資家に販売した(リパッケージ取引)と報道されています。

 関連するSPC(特別目的会社)が買い取った新株予約権付社債の大量保有報告を提出しており、その内容から買い取りは発行日の11月30日で額面1125億円(総発行額の75%)を単価101で買い取っていることが分かります。

 新株予約権付社債は新株予約権と社債部分に分離できないため、SPCが新株予約権付社債を購入して、その償還金を裏付けに社債を発行して投資家に販売したはずです。

 新株予約権付社債は無利息なので、SPCがその償還に合わせた5年債を発行した場合(3年目にコールオプションが付いているので多分3年債のはずですが)、新株予約権分をゴールドマン・サックスが購入してその代金をSPCに支払い、SPCがそれで利息を支払います。

 まず単純に考えれば、ゴールドマンはこの社債部分の利息を出来るだけ少なくして転売し、新株予約権を「割安」で手に入れ、もちろん借株をしてデルタヘッジを加えながら売却、買戻しを繰り返して「大儲け」するためとなります。

 ここのところ債券利回りが低下しているので、ソニーの格付け(BBB・Baa3)でも「特に日本では」それなりの有利な条件で販売できたはずです。

 ちょっと横道にそれるのですが、それに加えて新株予約権付社債には最初から「法制的欠陥」があるのです。

 新株予約権の概念は平成13年の商法改正で導入されたのですが、その新株予約権は「有償」と決められています。現在でも新株予約権(だけ)の発行は必ず「有償」で、無償発行は有利発行として株主総会の特別決議が必要となります。

 この概念は新株予約権付社債でも同じはずで、「有償」の新株予約権と「権利行使した時に代理払い込みとなる」社債部分の合計価値でなければならないはずです。

 ところが新株予約権付社債の新株予約権部分は「無償」なのです。厳密に言えば「社債部分の利息相当分」が新株予約権の価格とも言えるのですが、だとすると発行企業は新株予約権の価格を期間按分で償却する必要があります。でもそうなってはいません。

 これは明らかに法整備段階のミスでした。実際に新株予約権付社債の発行が出始めた時に議論になったのですが「いろいろ苦しい理屈を考えて」そのままになりました。

 ソニーの発行IRで「本新株予約権付社債の概要」の6の(9)に「新株予約権と引き換えに金銭の払い込みを要しないこととする理由」とわざわざ書かれているのは、その名残です。時間があったら読んでみて下さい。

 話を戻しますと、ゴールドマンは最近の日本債券市場の好環境と、この「法制的欠陥」をしっかりと捉えて「とんでもなく割安」な新株予約権だけを大量に取得したと考えられるのですが、実際はそれも違います。

 報道では一切詳しく書かれていないのでここからは本誌の推測となりますが、そもそも大半のヘッジファンドにとって今回のソニーの新株予約権付社債は久々に発行された「おいしい大型投資物件」のはずで、その75%がすぐに転売されることは絶対にありません。

 そこでもう1つ報道されている「もともとの投資家に新株予約権付社債を買い戻せる権利を新たに売却」が重要になってきます。

 つまり大半のヘッジファンドにしてみれば、社債部分に多額の資金を固定したくないため、引き受けた新株予約権付社債をすぐにゴールドマンに転売し、同時に新株予約権をいつでも「買い戻せる権利」を購入したことになります。

 新株予約権を「買い戻せる権利」と言っても、実際に新株予約権は権利行使するときに必要なだけで実際は償還時まで権利行使しないもので(権利行使期限が残っている間はオプション価値が残っているため、権利行使して捨てることはありません)、そのヘッジファンドにとっては「新株予約権」を保有しているのと同じ経済効果となります。

 つまり新株予約権の価値と、新株予約権を「買い戻せる権利」の価値は、ほとんど同じなのです。

 ゴールドマンは買い取ったソニーの新株予約権付社債から新株予約権を「買い戻せる権利」を、3年として(多分)額面の8~9%でヘッジファンドに売却し、一方で社債部分を3年分の利息として(多分)3~4%をつけて日本の投資家に売却し、あと最初にヘッジファンドに1%支払っているため(買い取り価格が101)、合計で4%ほどの収益をすでに手にしているのです(もっと多いかもしれません)。

 額面が1125億円なので軽く数十億円を、通常の引受手数料とは別に確保したのです。

 ついでに言うとゴールドマンは業界トップのプライムブローカーでもあるため、これに関するヘッジファンドの取引や借株の調達などを独占的に行い、さらに収益が上がります。

 11月20日付け「ソニーの新株予約権付社債発行」と、同21日付けの「同、その2」でも書いたのですが、だったら最初から社債にしておけば株価も長期にわたって低迷することも無くなります。ヘッジファンドが保有する新株予約権付社債は、仮に途中で株価が転換価格(957円)を上回ることがあっても、償還時にそれを下回っていればそっくり償還することになってしまいます。

 その価値(損失)相当分を、ゴールドマンに具現化されてしまったのです。

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コメント
結論としては、GSは手数料とは別に裁定取引分の利益を得て、それは巡り巡ってソニー株主の懐から出ているということになりますね。
何故ソニー経営陣はそのような回りくどいやり方を株主に間接的に損失を与えてまでわざわざ行うんでしょうかね?

GSがやり手なのは業界の常識ですが、経営者が鴨なのも相変わらずのようですね・・・。
>>関連するSPC(特別目的会社)が買い取った新株予約権付社債の大量保有報告を提出しており、その内容から買い取りは発行日の11月30日で額面1125億円(総発行額の75%)を単価101で買い取っていることが分かります。<<

101の意味は、<966.57-957>÷957×100%と解していいんでしょうか?

仕組債として、ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債に対して通貨を利用した取引が、実務上、繰り広げられるんですか?

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