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ここにもあった銀行の「あこぎなやり方」

2011年01月27日

ここにもあった銀行の「あこぎなやり方」

 銀行が、主に取引先の中小企業に販売していた為替デリバティブが、最近の円高で大きな損失をかかえており、問題が大きくなってきています。
 金融庁の調査では、中小企業1万9000社が保有しており、契約数で4万件にも上ると言われており、この損失による倒産も出始めています。もちろん、特に契約件数が多いのが三大メガバンクなのですが、新生銀行なども個人を含めて積極的に販売したようです。

 さて、この為替デリバティブなるものはどういうものなのでしょう。代表的な例を挙げて説明します。販売されたのは、2006年ころが多いようです。

 当時、米ドルが120円くらいだったのですが、向こう10年間、毎年ドルを100円で買える権利を購入します。額面100万ドルだとしますと、毎年米ドルが120円のままであれば、毎年100円で買ったドルを売却して(実際は差額金のみのやり取りですが)2000万円ずつ利益を受け取れることになります。手数料は一切かからないことになっています。

 多分、銀行員は「毎年2000万円ずつ儲かりますよ。円安になったらもっと儲かりますよ。
こんないい仕組みがタダで手に入るのですよ。」なんて、取引先の中小企業に優越的立場(貸付をしている銀行の立場が強い)を利用して押し込んでいったのです。
 おおかた、銀行の中でもエリートとされる企画部あたりの行員が、外銀に銀座あたりで接待されて勧められたスキームを、営業店に大号令をかけたのでしょう。
  
 ちょっと考えれば分かるのですが、これは向こう10年間の100円のドルコール(買う権利)を買っているので、顧客にタダで販売するためには、同じ期間の100円のドルコールを売らなければなりません。ただ、これでも儲け(もちろん銀行の)が出ないため、ドルコールを100万ドル分買ったなら、同時にドルコールを300万ドル分くらい売っているのです。
 ということは、為替レートが120円でいる限り、毎年2000万円は儲かるのですが、80円になると、毎年100円のドルを300万ドル買わされるので、売却すると6000万円ずつ損失が出るわけです。長期の契約なので、そうなってから解約すると膨大な損失が出ます。

 詳しい説明は省きますが、当時の日米金利差は5%くらいあったため、このスキームで銀行は膨大な利益をあげているはずです。(10年平均では米ドルの100円は、ほぼアットザマネーのため、売り越しているドルコールが相当の価格であるため)

 多分、批判があちこちから出て金融庁も黙っていられなくなり、各銀行に聞き込みを掛けたようです。 

 ところが、伝えられている解決策としては、本業が儲かっている企業に限り新規融資をする(返済能力のあるところには新規貸し付けで損失分を支払わせる。それ以外は切り捨てる)、満期が近付いた契約は償還期日を先延ばしする(大体、損失が膨らむだけですが、銀行は新たな契約でもう一度儲かる)、円高局面で利益の出る契約を新たに勧める(もう、笑うしかない)など、銀行のためになっても、損失に苦しむ顧客のためにはならないものばかりです。

 さらに、「金融商品取引法」を盾にとり、絶対に「損失補填」には応じないとしています。その代わりに、「金融ADR(裁判外解決手続き)」を適用して、第三者に仲裁してもらう方法を勧めるようです。

 この「金融ADR制度」は、昨年10月に知らないうち出来ていたのですが、金融関連のトラブルの早期解決のために、裁判等の複雑な手続きを取ることなく、第三者が解決する制度と説明されています。要するに「金融商品取引法」を超えた解決方法があるはずがなく、銀行も契約時に「リスクを認識した自己責任取引である」と言った確認書を取っているはずなので、結局は「どうせ責任を取るつもりなどなく、面倒なことは外部に丸投げして無視しよう」と言うことなのです。
 それにしても、昨年この事態への対処として、「金融ADR制度」を前もって作っていたとすると、金融庁・銀行界の「手回しの良さ」には驚くばかりです。

 最後に、「損失補填」の歴史的な事実を少しだけ書いてみましょう。

 1990年代の「損失補填」「飛ばし」は当時の証券界の力を徹底的に削ぎました。当時の四大証券全部に司直の手が入り、山一証券は倒産しました。
 「損失補填」をして顧客の損失の出ている株式などを証券会社が引き取るから「飛ばし」になるのです。当時の大蔵省証券局の幹部は、全て報告を受けていたのですが、問題発覚後はシラを切り通しました。

 野村証券の当時の田淵義久社長は、株主総会で「(損失補てんについて)大蔵省の承認を得ていた」と本当のことを言ったばかりに辞任に追い込まれました。
山一証券の倒産時には、当時の長野証券局長が「全く(飛ばしについては)初めて聞いて驚いている」とテレビで白々しく言っていました。

 ところが、「損失補填」は信託銀行でも行われており、違いは証券の「損失補填」は身銭を切っており、信託銀行の「損失補填」は顧客間で利益を付け替えていただけだったのです。つまり、勝手に利益の出ている顧客の運用財産から、損失の出ている顧客の運用財産に「損失補填」していたのです。ところが、このはるかに悪質だった信託銀行を含む銀行界の「損失補填」は、ついに表に出ませんでした。

 大蔵省は、証券界のみに厳しい処分を行い、結局銀行の証券業務参入の手助けをしたとしか思えません。

 大蔵省から金融庁に名前は変わっても、銀行寄りの体質は何も変わっていないのです。

平成23年1月27日

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