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新株発行を巡る「影響の大きい」裁判所の判断 その2

2013年06月03日

新株発行を巡る「影響の大きい」裁判所の判断 その2

 5月30日付け同題の記事で、JASDAQ上場のソーシャル・エコロジー・プロジェクト(以下「ソーシャル」、コード6819)が5月14日に発行決議した500万株の第三者割当増資に対し、独自の取締役と監査役を推薦する株主提案を出している株主が発行差止め仮処分を東京地方裁判所・民事第8部(谷口安史裁判長)に申し立てていたのですが、それが5月28日に却下されたところまで書きました。

 その株主は、当然に東京高等裁判所・民事第17部(原優裁判長)に抗告を申し立てていたのですが、これも5月31日に却下されました。これで6月3日予定の500万株の新株発行を差止める方法は無くなりました。

 表題は「影響の大きい」裁判所の判断となっているのですが、考えれば考えるほど「株式市場にとんでもない悪影響を与える」裁判所の判断と思えてきます。

 その理由を、別の「もっと分かりやすい」例を挙げて説明します。

 ちょうど6月1日に米投資会社サーベラスが、西武HDへのTOB(株式公開買い付け)の結果、32.42%だった持ち株比率が35.48%まで増加したと発表しました。これでサーベラスは株主総会で合併や定款変更などの重要事項を拒否できる33.4%以上を確保したことになり、西武HDにとってサーベラスの発言力が一層強化されることになります。

 サーベラスは来る6月25日の株主総会に、ダン・クエール元副大統領を含む8人の独自の取締役を推薦する株主提案を出しています。正確に言うとサーベラスがこの株主総会で行使できる議決権は32.42%のままですが、西武HDの現経営陣にとっては「不安である」ことは事実です。サーベラスの株主提案が出席者の過半数以上の賛成で承認されると、自動的に現経営陣の推薦する取締役が承認されないことになり、取締役会を開け渡さなければならないからです(現経営陣との関係が微妙な旧オーナーの堤義明氏が14.96%を保有しています)。

 仮の話ですが、6月25日の株主総会で現経営陣が取締役会を開け渡さなければならない状況に追い込まれていたとします。

 しかし西武HDの現経営陣には、突然に「秘策」が授けられたのです。

 それは、大急ぎで株主総会で逆転出来る議決権に相当する第三者割当増資を決議して「親密先」に割当て、株主総会までに払い込んでもらい新株を発行し、さらにその新株にも6月25日の株主総会の議決権を付与することです。まだ十分に間に合います。

 つまり接近する株主総会で株主提案を逆転否決し(現経営陣だけが最新の株主名簿を見ているので、正確な票読みが出来ます)、さらにサーベラスがTOBで確保した議決権比率を33.4%以下にして「拒否権」も取り上げることが出来るのです。

 「そんなことが許されるはずがない」「サーベラスが発行差止めを申し立てれば差止まるだろう」と思われるでしょう?

 事実、このように経営権を巡る争いがある場合の増資(相手の議決権比率を一方的に低下させるためだけの増資)は、2004年の宮入バルブ、2005年のニッポン放送、2006年のサンテレホン、2008年のクオンツなどで差止められていました。

 しかし、今回のソーシャルの増資に対する東京地方裁判所・民事第8部の差止め却下、同じく東京高等裁判所・民事第17部の抗告却下は、「経営権を巡る争いがあっても、(資金需要などの何か別の)目的があれば、差止めるべきではない」という、全く新しい判断を下したのです。

 因みにソーシャルは2115万株の発行済み株数のうち、独自の取締役と監査役を推薦する株主提案を出している株主とその賛同者が30%以上を既に確保しており、ソーシャルの過去の株主総会における議決権行使比率は50%を大きく下回っているため(仮にその比率が上昇して60%になったとしても)ソーシャルの現経営陣は取締役会を開け渡さなければならない状況に追い込まれていたのです。

 そこへ突然500万株の新株が発行されて、その新株に議決権が付与されるので(株主総会の直前に発表されます)、ソーシャルの現経営陣は取締役会を明け渡さなくても済むようになったのです。

 特にこの株主は、新株発行の差止めだけではなく、この現時点では未発表の議決権の付与も想定して差止めていたのですが、裁判所はその(議決権の付与の)可能性を認めながら、全て却下してしまいました。

 この裁判所の新しい判断は、今後は経営権を奪われそうな会社が「資金が必要」等の適当な理由をつければ、いつでも後出しの増資と議決権付与という「大変安直な企業防衛策」が出来ることを認めてしまったことになります。当然に裁判所の判例は、新しい方が有効になるからです。
 
 つまり「日本企業は株式市場を通じて経営権を奪われることがない」ことを意味する裁判所の新しい判断が出てしまったのです。

 また日本の株式市場の「ガラパゴス化」が進むことになり、特に外国人投資家にとって日本株への投資魅力が大きく削がれることになります。

 また今回の裁判所の判断には「もっと他にも重要なこと」が含まれているので、まだまだ続きます。本誌がここまで「大騒ぎ」している意味を理解してほしいのです。


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コメント
いつも興味深く拝読しております。

>全く新しい判断を下したのです
という点について、いささか疑問がございます。

不公正発行(会社法210条2号「著しく不公正な方法」)に関しては
判例上、主要目的ルールが採用されており
今回の判決は、このルールを踏襲したに過ぎないと予測されます
(判決文が公開されていないので詳細が分からないのですが)

主要目的ルールとは、会社の維持支配目的と資金調達等の目的が併有している場合でも、
主要目的が会社支配にあれば「不公正な方法」に該当し
主要目的が資金調達にあれば「不公正な方法」に該当しないとの考え方です。
すなわち、今回の判決は、裁判所が
ソーシャルの「わずか1億円の借金返済を迫られている」との主張を信じ切って
「ソーシャルには正当な資金調達目的がある」と認定した上で、
機械的に主要目的ルールを適用しただけだと考えます。

すなわち貴誌の「大騒ぎ」すべき対象は
裁判所の法適用ではなく、事実誤認(裁判官の経済音痴ぶり)だと考えますが
いかがでしょうか
ん~
事実誤認があったとしても
それが裁判所の判断です。となったら、
やっぱり大変な事に変わりないのでしょうね。
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