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ライツイシューは「駆け込み寺」か?

2013年08月30日

ライツイシューは「駆け込み寺」か?


 本日は、8月26日に発表されたT&Cホールディングス(JASDAQ上場・コード3832)のライツイシューについてですが、まさに「駆け込み寺か?」といいたくなります。

 本誌は昨年からライツイシューについて多くの記事を書き、今週も8月27日に「何が起こった? Jトラスト」、8月28日に「シャープもライツイシューにしたら?」を書いているのですが、そもそも本誌はライツイシューに肯定的なのか否定的なのか?といわれそうなので、はっきりとさせておきます。

 企業が諸事情を勘案してライツイシューが最善の資金調達方法と考えて実施するのであれば、何も問題はありません。しかし当局(財務局と取引所)が、どんな状況のどんな企業にもライツイシューであれば認めてしまうということが「もし」あるのなら、株式市場にとっては由々しき結果を招くことになります。

 そして後者であるとしか思えないケースが、T&Cホールディングス(以下「T&C」)のライツイシューなのです。

 T&Cは平成24年11月期に2億4200万円の債務超過に陥り、平成25年5月期に5億8700万円まで拡大しています。つまり平成25年11月末までに5億8700万(プラスそれまでに膨らむ分)の債務超過を解消しなければ上場廃止となります。

 一方で発表の前営業日である8月23日の株価は20790円、発行済み株数が27321株で、時価総額は5億6800万円でした。常識的には時価総額よりも大きな債務超過額(さらに増え続けていくと思われる)を11月末までに解消することは「絶望的」です。

 T&Cがかくも悲惨な状況に陥ってしまったのは、2012年6月14日付け「新規参入 資本のハイエナの悪事」にも書いたように、経験・人脈・ノウハウ・仁義に欠ける新規参入のブローカーが、あきれるような悪事を働いた結果です。この記事にはブローカーの実名が書いてありますので、よく読んで注意してください。

 T&Cは被害者ですが、その後の調査では増資の引受人(中国人)は完全に名前を勝手にブローカーに使われただけで、本当の資金は反社会勢力から出ていた可能性があります。そうなるとT&Cとしても増資に払い込まれた資金の「出所の確認義務」を怠ったことになり、明確な「法令違反」となります。

 またT&Cの株価も、本年4月中旬の5000円以下から、5月中旬に100,000円以上に突然急騰しており、そもそも現在の株価も「公正な株価」であるかどうかも疑わしいのです。

 普通はこのような会社は、絶対に増資が認められません。

 ところが、とんでもない「奥の手」で債務超過を解消するようです。

 まず田中茂樹社長をはじめとする14名(社)からの借入金のうち5億700万円を、24392株の新株と(20790円で)交換するデッドエクイティスワップ(DES)で消してしまい、同額の自己資本の増強とします。

 次にそのDESで発行される株数も加えた合計51713株に対し、新株予約権51713個を無償で割り当てるライツイシューを発表しました。さすがに新株予約権2個で1株としているのですが、それでも最大で25856株の新株が発行されます。権利行使価格は1株(2個)=13000円 なので、最大3億3600円の資金調達(自己資本の充実)となり、さすがに両方で債務超過は解消されることになります。

 しかし27321株だった発行済み株数が、最大で77569株となり、何と2.84倍になってしまいます。

 もしこのような暴挙が、単にライツイシューであるからといって認められたのであれば(そうだと思いますが)、明らかに株式市場にとってもライツイシューにとっても「悪しき前例」となってしまいます。

 本日(8月29日)のT&Cの株価は、まだ17610円と「比較的しっかり」ですが、どのように計算しても市場で支えられるはずのない株数がたぶん短期間で売却されるはずで、DESはともかくとしても、ライツイシューも債務超過解消も「絵に描いた餅」に終わってしまいそうな気がします。

 ライツイシューは「駆け込み寺」ではないはずです。


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コメント
御意
このファイナンスは失敗すると思います。
本題から逸れてしまいますが、ライツイシュー自体は大変合理的な既存株主を大切にした増資方法かと思います。これまで主流だった公募増資は、一部のヘッジファンドやそれに様々なサービスを提供する証券会社の利益に貢献するだけです。言葉を返せば、ライツイシューは、ヘッジファンドや証券会社にはおいしくない増資方法といえるでしょう。
ライツイシューの記事が大変面白かったです。
指南役の方々はいろいろ奮闘してるんですね。

株主割当増資(ライツ・イシュー)
2010年5月:タカラレーベン、ノンコミットメント型(日本で最初に本手法を用いた増資を行った。)
2012年10月:エー・ディー・ワークス、ノンコミットメント型(国内2号目となる上場ライツイシューを実施。)
2013年3月:クレアホールディングス、ノンコミットメント型
2013年4月:フォンツ・ホールディングス、ノンコミットメント型
2013年4月:アイ・アールジャパン、コミットメント型(初のコミットメント型ライツ・オファリングを実施。)
2013年5月:日本エスコン、ノンコミットメント型
2013年5月:Jトラスト、ノンコミットメント型
2013年5月:メガネスーパー、ノンコミットメント型
2013年6月:ガイアックス、ノンコミットメント型
2013年6月:シスウェーブホールディングス、ノンコミットメント型
2013年8月:レカム、ノンコミットメント型
2013年8月:T&Cホールディングス、ノンコミットメント型
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