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川崎汽船の新株予約権付社債

2013年09月12日

川崎汽船の新株予約権付社債


 昨日(9月10日)、川崎汽船(東証1部上場・コード9107)が500億円のユーロ円建て新株予約権付社債(期間5年)発行を発表しました。

 久々の大型発行ですが、全額がユーロ円建てなので「ほぼ全額がヘッジファンドに販売される」と考えてよさそうです。

 転換価格も同日に発表され、9月10日の引け値(251円)を25%上回る314円となりました。本日(9月11日)の引け値は13円安の238円となっています。全額が転換されると1億5923万株が発行され、現在の発行済み株数9億3938万株に対して16.9%の増加となります。

 川崎汽船の株価は2007年10月の高値1760円から下落を続け、2012年9月には安値90円となり、発表のあった9月10日には255円の戻り高値を付けていました。

 この川崎汽船の新株予約権付社債の「人気」ですが、一般的に新株予約権付社債はヘッジファンドから「無条件で引っ張りだこ」となるため販売は問題がないはずです。

 ヘッジファンドが新株予約権付社債に投資するときは、普通は投資元本をクレジットリスク込みで外部に売却してしまうのですが、その時に必要なコストが「新株予約権の取得コスト」となります。

 その「新株予約権のコスト」を、償還までの5年間の株式売買益で上回る必要があります。その際に貸株の調達が必須です。たとえば株価が上昇して転換価格を上回れば貸株を調達して売却するのですが、転換せずに株価が下落すれば買い戻して利益を確保し何度も繰り返します。また転換価格を上回らなくてもデルタヘッジの考えで売却していきます。

 つまり株価が転換価格を上回っても転換が進むとは限らず、償還時に株価が転換価格を下回っていれば「そっくり」償還する必要が出てきます。

 川崎汽船は2005年に300億円の新株予約権付社債(転換価格851円)を発行しており、株価は2007年10月に1760円まで上昇していたのですが、償還期限の本年4月に255億円と「ほとんどそっくり」償還しています。

 投資家がほとんどヘッジファンドで、償還期限までの8年間の株式売買で「たっぷり」儲けられてしまったようです。

 そこで今回は500億円の発行となったようです。資金用途は200億円が設備投資、300億円が有利子負債の返済となっており、本年4月に償還した分の借り換えともいえます。

 さて川崎汽船の格付けはS&PでBBマイナスなので、5年間の資金負担とクレジットリスクを回避するためには「それなりのコスト」がかかります。つまりそれだけ新株予約権を「高く」取得することになるのですが、川崎汽船の予想株価変動率がそれほど高くないことと転換価格を時価の25%も高く設定しているので、新株予約権の価値もそれほど高くはなりません。つまり昨年11月に発行されたソニーの新株予約権付社債に比べて投資魅力はかなり落ちます。

 そうはいっても、共同幹事の野村証券(実際はロンドン現地法人)に提言があります。

 1500億円発行されたソニーの新株予約権付社債はゴールドマンサックスが1125億円もリパッケージして、そこに三井住友銀行が「タダみたいな金利」で資金提供したため新株予約権の価値が実際の予想株価変動率に比べてかなり安くなり、その差額を「ごっそり」と儲けたのです。その後ソニーの株価が2倍以上になったことは結果論です。

 そこで同じ仕組みを作り、共同幹事のみずほ銀行に「できるだけタダみたいな金利」で資金を出してもらって儲けてみたらどうでしょう? 別に難しいことではなく、低い金利で資金調達ができて、貸株が用意できて、新株予約権の価値の計算を間違わずにヘッジファンドと強気で交渉できれば、「一瞬」で儲かります。引受手数料以外に儲かるのです。

 先ほど書いたように新株予約権付社債の投資魅力としてはソニーよりも落ちるのですが、たまにはゴールドマンサックスに対抗してみるべきです。

 現在、有料メルマガ「闇株新聞 プレミアム」で「エクイティファイナンスの変遷と当局の対応」をシリーズで掲載しています。新株予約権付社債などの解説がたっぷり出てきますので、宜しかったらお申込みください。9月2日配信分と9月9日配信分もお送りします。


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コメント
違法でない詐術・自己責任
あらゆるハイブリッド金融商品にオプションを忍ばせることで違法性を阻却しているので弱肉強食ですが、国内金融機関には外資に対し頑張ってほしい。しかし毒を薄めた合成証券の格付けは限りなく違法に近いはずですがそれでは成り立たない業界ということでしょうか。
大波小波様

毒を薄めた合成債券の格付けは違法ですが、残念ながら日本には国際的に通用する格付け機関がないため、「違法格付けに騙されないように自衛する」ことしかありません。

本日の記事での提言は、ヘッジファンドの「上前」をはねようとするもので、その原資は川崎汽船のリスクを海外格付け機関よりも甘く評価して資金を提供するところから得られ、会社の事情に精通しているメインバンクのみずほ銀行なら「取れるリスク」だと思います。

まさか、またゴールドマンサックスにいわれて「ただみたいな金利」で資金提供してしまうことはないと思いますが、、
違法格付けの判例
自己否定するような欧米での判例は出ていないのでしょうかね。
テンプ
非賃借銘柄で、機関投資家のみ貸し株できるような銘柄が公募とCB同時にやるとヘッジファンドが入って最近の株価推移になることありますね。
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