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エクイティファイナンスの裏側-----儲けたのは誰だ? Part2

2010年10月16日

エクイティファイナンスの裏側 儲けたのは誰だ? Part2


 このこところ、新興市場に上場する企業や、業績不振の上場企業のエクイティファイナンスについてはすべて怪しいとみられ、当局や取引所が蛇のように嫌い、ついには実質的に発行が不可能となるようにしてしまった。

 ここでは、公明正大に行われていると思われている大企業のエクイティファイナンスの実態が、皆さんに知らされることがほとんどないうちに、いつの間にか特定の投資家(外国のヘッジファンド)とそれを仲介した外資系証券会社だけが巨額の利益を上げ、日本人がババをつかまされているのです。

 これに比べてゴミのように小さい新興市場の上場企業のエクイティファイナンスに対して大変なエネルギーをかけて排除しようとする当局は、なぜかこのような大きな仕掛けに対しては全く注意も払おうともせず、全くのフリーパスとなっています。もちろんこれらの大きな仕掛けは、法律的には問題がないとされているからだと思いますが、それにしてもあまりにも滑稽と言わざるを得ません。

 今回では、新株予約権付転換社債(いわゆる転換社債)のからくりについて説明します。そして次回では、このシリーズの主役としての邦銀の巨額エクイティファイナンスについて説明します。

 平成20年5月23日に武富士が700億円のユーロ円建て新株予約権付社債の発行を決議しました。今回の例として挙げた武富士は、前回の例に挙げた東京電力などに比べて、大企業かとか優良企業かとか言われると、いささか問題があります。また武富士は数多くの社会的問題を引き起こし、平成22年9月28日に会社更生法を申請し、株価も1円となってしまいました。ただ、いくつか示唆に富むので今回の例に使いました。大型の新株予約権付社債はユーロ発行、国内発行を問わず、多かれ少なかれ同じようなことが起こっていると考えて下さい。

 さて、この武富士の新株予約権付社債は、10年満期で、利率は1.5%、転換制限付き(転換価格の120%以上でないと転換できない)で、UBSのロンドン証券現法が全額引き受けました。また転換価格は2352円に設定されました。その時の株価は2100円台で武富士の時価総額も3200億円ほどありました。

 この平成20年5月頃は、どういう時期だったかと言うと、その前年あたりから世界的にサブプライム問題が深刻化しておりましたが、まだパニック状態にはなっておらず、日経平均もまだ14,000円台でした。武富士をはじめとする消費者金融会社は過払い金返還請求の波に徐々に資金繰りが苦しくなり始めていたころでした。

 その数ヵ月後にリーマンショックが起こり、日経平均は平成20年10月に一時7000円割れまで急落し、武富士の株価も1000円を大きく割り込み、その後に二度と株価が回復することはありませんでした。ついでに言うと、武富士の新株予約権付社債を引き受けたUBSもサブプライム問題で数兆円の損失を計上することになるのです。

 IR資料によると、この新株予約権付社債の発行で武富士の受け取った資金は681億5000万円と出ていました。つまりUBSに支払った手数料が18億5000万円ということです。しかし、UBSはこの700億円の新株予約権付社債を自分で保有していたわけでなく、全額を投資家に販売していたはずです。その販売先はもちろんヘッジファンドです。

 ここで、一般的な話として、こういった大型の新株予約権付をどうしてヘッジファンドが買うのでしょうか? 

 まずヘッジファンドが買いたがるのは株式の流動性が大きく(つまり日々の出来高が大きく)、借株がまとまって手当てできることです。借株市場は国内には種々の規制があるためほとんど発達していませんが、海外では大きな市場となっております。これも日本の種々の規制が、本来、日本国内の投資家や証券会社等の金融機関に、取引の利便性や収益機会を提供すべきである「日本株式の」借株市場の発達を拒み、ごっそりと海外投資家のみに利便性と収益機会を提供することになってしまったのです。(その恩恵を最も享受しているのがヘッジファンドです。)流動性も借株も規模の大きな上場企業ほど大きいため、逆に大型の新株予約権付社債の方が人気が出て、普通奪い合いになります。(これは、決して武富士の収益性とか将来性が評価されているわけでもなんでもありません。流動性と借株市場が大きいかどうかだけで判断されるのです。)

 多分UBSは、ものの30分で全額を売り切ったと思います。30分の報酬が18億5000万円だったのです。

 それでは、この武富士の新株予約権付社債を買ったヘッジファンドはここからどうするのでしょうか? 

 ここでは100億円買ったヘッジファンドがいたとします。まず、資金効率を考えるヘッジファンドは100億円も資金を固定することはしません。ヘッジファンドによってやり方が少し違いますが、普通社債部分のクレジットスワップを買い、金利スワップもかけて元本保証付きの円の変動利付債にして市場に売却し100億円を回収してしまいます。

 実際は新株予約権付社債の社債部分は切り離せないのでリパッケージ等の工夫がいるとか、クレジットスワップは当時の武富士でもかなり高かったので償還期限までの10年ではなく、償還請求できる2年まで買っているはず(-実際に後で説明しますが2年後に償還請求がかかった)など説明が非常に専門的になるので、ここは100億円も回収し、武富士の倒産リスクも回避していると考えておいてください。

 ただこれらの取引では当然コストがヘッジファンドの持ち出しになります。その金額が10億円とします。(多分、実際もそれくらいだったと思います)

 やや説明を簡単にしますと、武富士の場合、その後株価が転換価格を上回ることは一度もなかったのですが、普通は株価が上がったり下がったりを何度もくり前します。株価が転換価格を上回ると借株を売り始め、もっと上がればもっと売ります。いくら上がっても転換価格で新株予約権を行使すれば決められたコストで株券が得られて利益が確保できるため、何の問題もありません。そのまま株価が上がりきって二度と下がらなければ、新株予約権を行使して借株を返却して、その差額が儲けとなります。

 ところが普通上がった株価はまた下がってきます。その時は下がった株を買い戻して、また上がってきたら売りはじめます。こうやって新株予約権を行使することなく、何度でも利益を上げることができます。

 実際の例で、新株予約権付社債を発行し、かなりの期間、株価が転換価格を上回っていたのに全然転換されず、その後株価が下がってしまい、すべての新株予約権付社債を償還しなければならなくなってしまった例があります。結局ヘッジファンドに膨大な利益をもたらし、発行企業は1円の自己資本の充実もできなかった例も結構あります。

 別に転換価格を上回らなくてもヘッジファンドがその時々に予想する株価レンジの上限に来たら、借株を売り始めることもあります。この場合転換価格とは逆ザヤになるので、全部は売らずに残しておき、上がれば売り続け、下がれば買い戻しをして、これまた何度でも利益を上げることができます。武富士の場合は途中(と言ってもほとんど発行して間もないころから)経営危機が表面化したため、多分ヘッジファンドは借株を目いっぱい売り、そのまま放っておいて巨額の利益を上げたものと思われます。

 途中の説明が長くなりましたが、100億円の武富士の新株予約権付社債を買ったヘッジファンドのコストは、前述の10億円で、これで100億円に相当する武富士の株を償還期限である10年間、前述のような手法で売り買いを繰り返し、10億円以上の収益を稼ぎだせると予想できれば良いのです。この予想収益は武富士の株のボラティリティで計算するのですが、私が見てきたほとんどの大型の新株予約権付社債は収益予想を立てると大幅なプラスのものばかりで、ほとんど奪い合いとなるのです。

 これらは、日本では各種の規制から借株等ができないため、日本の投資家が参加すらできなく、日本関連のエクイティファイナンスであるにもかかわらず、ヘッジファンドに巨額の収益機会を提供し続けているのです。

 この武富士の700億円の新株予約権付転換社債は、もちろん1円も転換されませんでした。そして財務状況の急激な悪化から、発行2年後の平成22年6月には、早くも繰り上げ償還条項が適応されることになりました。(多分、財務制限条項に抵触したのだと思いますが、不思議なことに発行時のIR資料には、このことは一行も開示されていませんでした)

 武富士としても、これが不可避と分かった平成21年11月に、全額現金償還なら65%、あるいは現金25%と2011年償還の10%のユーロ円債75%との組み合わせによる交換を持ちかけ、約250億円ほど償却しました。これに支払った金額は115億円ほどです。

 しかし、不思議なことに会社更生法申請のわずか3カ月前の平成22年6月に、その時残っていた新株予約権付社債414億円を全額現金償還しているのです。会社更生法申請時の負債総額が4300億円残っていたのに、ヘッジファンドが大儲けしつくした後の新株予約権付社債を全額現金償還したのです。もちろん償還しないとデフォルト宣言をされて、会社がその時に終ってしまうことになるので、やむをえなかったということでしょうが、その時点で法的手続きを含めて検討する勇気はなかったのでしょうか?

 細かいことですが、平成21年11月時点で2011年償還のユーロ円に交換した投資家は、当然これは紙くずになりました。交換に応じなかった投資家には全額支払われたのです。交換に応じなかったということは、その時点で借株の売り残を持っていたヘッジファンドに他ならないので、借株の空売りで大儲けした(償還時の株価は200円台だったので、この辺で手じまいしたことになる。あるいはついでだからと新株予約権は償還されても、売り残を放っておいて本当に1円になって、さらに儲けたヘッジファンドもあるに違いないと思います)ヘッジファンドに全額現金償還したのです。
 
 以上、非常に内容が専門的で分かりにくかったというご批判は当然あると思います。しかし日本の外で、日本のエクイティファイナンスを使って巨額の利益を上げているヘッジファンドの実態の、ほんの一端を知ってもらいたく、あえてご紹介いたしました。

 次回は、もっとすごい邦銀のエクイティファイナンスについて書きます。


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